研究課題
研究3年目となる本年度は、年輪幅標準年輪曲線の延長と既存の曲線間に生じている年代ギャップを埋め、連続的な標準年輪曲線を構築することに重点を置いた。具体的には、長野県の寺院の古材を対象とした。得られた古材30点以上をデジタルカメラなどを用いて撮影、計測し、6世紀から13世紀にかけての600年長の年輪幅曲線構築を行った。これにより、既存の年輪幅曲線間に生じていた、7世紀から9世紀の年代ギャップを埋め、長期の年輪幅標準年輪曲線を確立することに成功した。また、さらに過去への延長を達成するため、鳥海山周辺から新たに出土した紀元前の埋没木試料を多数収集し、試料調製を行った上で計測を開始した。現生試料の酸素安定同位体分析については、引き続き、新潟、仙台などから得られた新規スギ試料のセルロース抽出・切り出し・秤量を継続するとともに、青森、岩手などの既計測サイトの試料数増加を図り、同様に切り出し・秤量作業を進めた。また、古材試料についても、測定試料の切り出し作業を継続した。ただ、本年度は、質量分析計の不調と測定に必要なヘリウムガスの入手困難という事態が生じたため、予定していただけの測定を実施することができなかった。
3: やや遅れている
長期年輪幅標準曲線構築については、今年度予定したとおり、連続的な曲線確立に成功したため、順調に進展したと評価できる。一方、酸素安定同位体比測定については、測定用試料の準備は進んだものの、質量分析計の不調とヘリウムガス入手性という外的要因があり、十分な測定数を確保することができなかった。以上より全体としてはやや遅れていると評価した。
本年度得られた長期年輪幅標準曲線構築の成果を査読誌に投稿するとともに、安定同位体比測定について、担当している研究分担者との連絡を密にしながら着実に測定を実施し、成果を得る予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Quaternary International
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巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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