研究課題/領域番号 |
16H03099
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
塚田 全彦 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 准教授 (60265204)
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研究分担者 |
桐野 文良 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 教授 (10334484)
石井 美恵 佐賀大学, 芸術地域デザイン学部, 准教授 (30555008)
佐野 千絵 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 部長等 (40215885)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 保存科学 / 光劣化 / 低酸素環境 / 波長依存性 |
研究実績の概要 |
本研究は(1)低酸素環境下での光変退色挙動とそのメカニズム、(2)光劣化の波長依存性、の2項目に関して、日本古来の天然染料およびそれで染めた染織品を中心に、光劣化しやすい材料を対象として基礎データを集積し、これらを含む文化財を展示・活用する機会・可能性を広げ、かつ展示の安全性を高めるために必要な情報を提示して、その実現に寄与することを目的とする。そのために、光劣化しやすい各種材料を対象に、(1)、(2)のそれぞれについて条件を変えて加速光劣化実験を行う。実験にはマイクロフェイディング・テスター(MFT)を応用するが、本研究では装置機構の改変と、必要な実験条件の最適化を行う。本年度は主に1.MFTの装置機構の改変、2.加速光劣化実験における温度、湿度、酸素濃度の調節法の最適化について検討した。 1.について、MFTは加速光劣化試験のための試料への光照射と同時に、供試試料の反射スペクトルの測定を行う機構を持つが、本研究では光劣化機構の波長依存性を検討するために、光源から光照射・集光プローブの間に分光器等で単一波長の光を取り出す必要がある。そのために一定時間ごとの測定時のみ別の光源からの白色光と切替える機構を導入する。本年度は光路切替スイッチと二つの白色光源を用いてこのシステムの構築を検討した。一定時間ごとの光路の切替を行うことはできたが、この切替と分光器での測定の同期にさらに調整が必要である。 2.については、試料とMFTの光照射・集光プローブを含めた密閉環境の構築をプラスチック製袋、アクリル樹脂製箱を用いて検討した。本研究で作製したMFTのプローブヘッドは従来のものより大きく、そのため今回検討した方法ではリークが大きくなり、制御が不十分で、また低酸素環境を構築するには置換用ガスの消費が大きくなることが判明した。そのため、容器形状、材質等についてさらに検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は申請時に計画した装置機構の改変と実験条件調節法の最適化が計画通りに十分に達成できなかった。前者に関しては一定時間ごとの光路の切替はできたが、この切替と分光器での測定を別のインターフェースで制御しており、同期が不十分な状況である。同期にこだわらず、光劣化用の光を照射する間も連続して計測させれば目的のデータを取得することは可能であるが、不必要なデータも多量に取得することになり、データの後処理も含め非効率であるため、さらに調整したい。後者に関しては従来販売されていたプローブヘッドでは今回検討した方法で現状よりもうまく環境を制御できていたが、本研究で作製したプローブヘッドはこれよりも大きく形も異なるため、リークが大きくなる原因となった。これは装置を新たに部品から構築したことにより、当初予期していない状況が生じたものである。 そのため、本年度計画していた予備実験の実施も十分に実現できておらず、大幅に遅れていると言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の実施に必要なMFTの装置機構の改編については、光路切替スイッチと分光器の両者を単一のインターフェースで制御することの検討も含め、早急に取り組む。うまくいかない場合は上述のように光路切替と測定の同期は行わずに連続して測定し、データを後処理する方法に代えて研究を推進する。実験環境の制御法には密閉環境構築のための容器の形状、材質とともに、プローブヘッドに代えて市販の反射スペクトル測定用の同軸二分岐光ファイバーを利用することも含めて、早急に再検討し、実験を進める。
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