研究課題/領域番号 |
16H03103
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
徳山 英一 高知大学, 海洋コア総合研究センター, 特任教授 (10107451)
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研究分担者 |
村山 雅史 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 教授 (50261350)
山本 裕二 高知大学, 教育研究部自然科学系理学部門, 准教授 (00452699)
宮里 修 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 講師 (60339645)
谷川 亘 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 主任研究員 (70435840)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 南海トラフ地震 / 海底遺構 / 地震性沈降現象 / 津波 / ビーチロック / バイオミネラリゼーション |
研究実績の概要 |
歴史南海地震の災害記録(沈降量・津波浸水域)が海底で保存されていると考えられている高知県沿岸部の3地域(大月町柏島・須崎市野見・土佐清水市爪白)について調査を実施した。 大月町柏島では、サイドスキャンソナーによる詳細な海底地形調査、および試料採取を実施した。海底地形分析の結果、柏島北部の海底に海岸線と平行に伸びる3段の石堤構造物を確認することができた。これまで文献等により2段の存在は確認できていたが、今回初めて3段目の存在を確認できた。試料採取は3段の異なる石堤について実施することができた。また、水中カメラの科学的利用可能性を確認した。 須崎市野見では、野見湾内で、海底の試料採取地点の正確な情報を取得するために購入したUSBL方式水中測位装置(Applied Acoustic Engineering社製EasyAlpha)のテストを実施した。その結果、地図をベースとした潜水士の位置情報をリアルタイムに把握することが不可欠であるとわかったため、新たにUSBL用のソフトウェアの改良を実施し、潜水士2人の位置情報を同時に地図上で確認できるシステムを構築した。 土佐清水市爪白では、海底に沈んでいる人工石柱の起源を明らかにするため、岩石物理化学データと年代データを取得した。岩石物理化学データの結果から、石柱の起源は三崎層群竜串層の砂岩である可能性を強く示した。さらにpXRFによる元素分析データを用いた多変量解析を実施した結果、海底石柱は、三崎層群竜串層砂岩だけでなく、爪白地区にある比較的古い時代に作られたと考えられる石造物(石段・家の基礎)と同じ化学的特徴を示していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
柏島では2回の海底地形調査を経て、海底地形データの取得に成功した。さらに、海底から試料を採取することができたため、本年度はその試料の年代化学分析を集中して実施できる。また、海底下の試料採取位置を正確に求めるためのシステムの開発の成功にありつけたため、本年度は、このシステムを実際の海底下試料採取の採取に活用できる。 土佐清水爪白の研究についてはほぼすべてのデータが出そろっており、現在論文を執筆中である。また、いくつか論文には利用していない研究データ(帯磁率・XRFコアロガー)もあるため、そのデータも論文としてまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 柏島調査:本年は、海底石堤構造物の成因と起源を明らかにするために、採取した試料の細粒マトリッス部分の鉱物化学分析、微細構造観察、年代分析を実施する。鉱物化学分析はXRD分析とRockjock(ソフトウェア)による鉱物同定と定量化を実施し、またポータブルXRFによる主要元素の定量化を実施する。微細構造観察はSEMおよびTEMにより実施する。マトリックス部分の生成年代分析はAMSによる放射性炭素代測定法により実施する。分析結果によっては追加サンプリングも実施する。また、昨年度サイドスキャンソナーで取得した海底地形の再解析を実施し、地形変動と年代の相関を考察する。再解析はsonarwiz(Chesapeake Technology, Inc.)を用いる。 (2) 爪白調査:高知県土佐清水市爪白地域で見つかった海底石柱の起源を明らかにするために、昨年度、石柱の岩石の物理化学的特徴を分析した。本年度は、その結果を論文にまとめ、海外の学術雑誌に投稿する。一方、採取した石柱の中で、中心に穴があいた石柱(現在は穴は沈殿物で埋まっている)が見つかっている。穴が人工物の痕跡となり得るか、そもそも沈殿物は何かを評価するため穴の沈殿物の化学分析と年代測定を実施する。 (3) 野見湾調査:高知県須崎市野見湾は地震性沈降過程が海底地形に保存されている可能性がある。そこで野見湾周辺沿岸部の海底地形調査(水深最大100m)を実施し、過去の海食台・波食棚地形の確認を実施する。また、該当する海底地形が形成された年代測定を評価する。海底地形調査はサイドスキャンソナー・マルチビームスキャナーを用いて実施する。年代測定のための試料採取はグラブ採泥器により実施する。
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