研究課題/領域番号 |
16H03105
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研究機関 | 東北芸術工科大学 |
研究代表者 |
石崎 武志 東北芸術工科大学, 文化財保存修復研究センター, 教授 (80212877)
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研究分担者 |
澤田 正昭 東北芸術工科大学, 文化財保存修復研究センター, 教授 (20000490)
米村 祥央 東北芸術工科大学, 芸術学部, 准教授 (50332458)
杉山 智昭 北海道博物館, 研究部, 学芸員 (90446310)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 保存科学 / 寒冷地域 / 遺跡 / 石造文化財 / 修復材料 |
研究実績の概要 |
本年度の調査の対象としては、昨年に継続して、北海道森市の鷲ノ木遺跡、青森県青森市の三内丸山遺跡、岩手県平泉町毛越寺の遣り水の景石、山形市の重要文化財の元木の石鳥居などを選択し調査を進めた。また、雪が石造文化財や土遺構にどの様に影響を与えるかに関しては、昨年に引き続き、タイムラプスカメラを設置し、積雪の状況を観察した。三内丸山遺跡の子供の墓内での水の浸透に関しては、UCリバーサイド大学のシムネック氏の開発した、水分移動解析プログラム(HYDRUS3D)を用いて解析した。 岩石の樹脂処理方法に関しては、凝灰岩試料を用いて、刷毛塗りの方法で、石材上から塗る場合、下から塗る場合に、どの様に浸透するかについて、実験を行っ た。この実験から、やはり重力の影響により、上から塗った方が、下から塗るより多くの樹脂が浸透することが再確認された。樹脂処理でよく使われているWackerOHに関しては、樹脂処理をすることにより、石材の空隙がどの程度減少するかに関して実験を行った。含浸を1回行うことにより、10%程度空隙が減少することが分かった。このため、何度も処理をすることにより、空隙が小さくなり、水の移動速度が小さくなることが予測されるため、実際の保存処理を行う際には、この点も十分に考慮に入れる必要があることが分かった。 また、元木の石鳥居の劣化原因として、乾湿の繰り返しによるスレーキング現象による効果も考えられるので、元木の石鳥居を構成する成沢地区凝灰岩を用いて、室内実験を行い、その劣化状況に関して詳細に検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
寒冷地の遺跡の環境測定に関しては、昨年度に引き続き、北海道森市の鷲ノ木遺跡、青森県青森市の三内丸山遺跡、岩手県平泉 町毛越寺の遣り水の景石、山形市の重要文化財の元木の石鳥居などで調査を進めることができた。 また、岩石の樹脂処理方法に関しては、凝灰岩試料を用いて、刷毛塗りの方法で、石材上から塗る場合、下から塗る場合に、どの様に浸透するかについて、実験を行った。脂処理でよく使われているWackerOHに関しては、樹脂処理をすることにより、石材の空隙がどの程度減少するかに関して実験を行った。含浸を1回行うことにより、10%程度空隙が減少することが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策に関しては、まず、現在まで行ってきた、寒冷地の遺跡周辺の環境調査、以降や石造文化財の劣化調査を継続して行う予定である。これらの基本的な、環境データをもとに、以降や石造文化財内の水の浸透状況や凍結融解の状況に関するシミュレーション解析を行い、より定量的に劣化状況を把握 する。 作成した岩石の凍結劣化状況観察装置を用いて、様々な岩石の凍結劣化に関するメカニズムに関する実験を行い、そのメカニズムを明らかにする。 石材の凍結融解による劣化対策のために樹脂処理法に関する実験を継続し、より有効な樹脂処理法に関して、実験および解析を継続して行く予定である。 樹脂がどの様に石材に浸透していくのかを評価するために、水分移動解析プログラム(HYDRUS3D)等が有効であり、今後は、これらの成果をもとに、実際の元木の石鳥居などの、樹脂処理の際に、どの程度樹脂が浸透していくかについて、定量的に評価する予定である。
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