研究課題
前年度に引き続き、夏季に尻労安部洞窟の発掘調査を進め、更新世動物化石について追加資料を得た。また、過年度出土動物遺体のうち、特にナイフ形石器と近接した位置から集中的に出土したノウサギの歯について、個体別に微量試料の放射性炭素年代測定を試みた。同測定値が近似した値に収まれば、旧石器時代人がノウサギなどの小型哺乳類も積極的に狩猟対象としていた蓋然性が高まり、従来大型獣狩猟のみが強調されるきらいにあった列島の旧石器時代人の動物資源利用のイメージに再考を促す成果となる。尻労安部洞窟を利用した旧石器時代人の行動圏を明らかにする上からかねて問題となっていた台形石器の石材については、下北半島・津軽半島の1級・2級の26河川計30地点から採集した転石との比較も経て、本州北部にも産出する玉髄化した頁岩ないし泥岩であることを確認した。本年度は研究協力者の市田直太郎(東京都埋蔵文化財センター)にその成果を日本旧石器学会で発表させるとともに、同氏を筆頭著者とする原著論文を査読誌に投稿する準備も進めた。尻労安部洞窟のサイトフォーメーション・プロセスを明らかにすべく、前年度に引き続き、西山賢一氏(徳島大学)の協力も得て、各層から採取した土壌サンプル中に含まれるテフラの検出に努めた。その結果、火山ガラスこそ検出されなかったものの、斜方輝石と角閃石の屈曲率から洞窟内に二次堆積したテフラを特定し、各層の形成時期を凡そながら絞り込むことができた。なお、研究代表者の佐藤は、浅間縄文ミュージアムで開催されたシンポジウムの招待講演に際し、本研究課題の成果を社会発信することにも努めた。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
季刊考古学
巻: 151 ページ: 77-78
Egyptian Journal of Forensic Sciences
巻: 10-3 ページ: -
10.1186/s41935-020-0181-z
Quaternary International
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10.1016/j.quaint.2019.04.023
http://web.flet.keio.ac.jp/~sato/shitsukari/index.html