研究課題/領域番号 |
16H03108
|
研究機関 | 千葉県立中央博物館 |
研究代表者 |
島立 理子 千葉県立中央博物館, その他部局等, 主任上席研究員 (00332354)
|
研究分担者 |
菊地 則雄 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (00291112)
後藤 亮 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (10769897)
駒井 智幸 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (20260242)
黒住 耐二 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (80250140)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 多言語化 / 民俗語彙 |
研究実績の概要 |
日韓の魚屋、市場等で調査を行うとともに、日韓両国で作られ、流通している魚醤についての調査を行った。 これまでの日韓の調査を通じてわかったことは以下の通りである。たとえば、「イワシ」という和名の魚はいない。ニシン目ニシン亜科の複数の魚の総称であり、日本ではマイワシ、ウルメイワシ、カタクチイワシの三種類が利用されているイワシ」という言葉を聞いてどのイワシを思い浮かべるかは個人によって違う。 日本人同士で「イワシ」について話していてもすれ違いが生じている可能性が十分にある。翻訳以前の問題といえよう。それに対し韓国語でマイワシとカタクチイワシとマイワシは明確にわけている。 私の勤務する博物館にも干鰯づくりのジオラマがある。そこに「イワシ」とは書いてあるが、マイワシともカタクチイワシとも書いていない。さて、このジオラマの多言語化(韓国語への翻訳)を考えるとしよう。干鰯の「イワシ」は何か、マイワシなのか、カタクチイワシなのか、あるいはウルメイワシなのか。干鰯についてかかれた文献の多くには、ただ「イワシ」とのみ書かれている。日本語では「イワシ」としておく分には問題はない。しかし、韓国語に翻訳するならば白黒はっきりする必要が生じてくる。 「イワシ」を例に紹介したが、このような例は事欠かない。生活文化を翻訳するためにはまず、自国の文化を知り、なおかつ相手の文化を知らなくてはならない。展示には伝えたい事がある。そのための1つの手段が解説やキャプションである。それらは、読む人の事を考えて書くべきものである。 読む人の事を考えて、どのように翻訳すれば展示を理解してもらえるか考える。多言語化にはその作業が必要であろう。これはなかなか大変な作業であるが、その作業を通して自らの文化を見直し、相手の文化を理解することができるようになるのではないだろうか。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日韓両国における語彙の調査はほぼ終了しており、今年度は補充調査を残すのみとなっている。ほぼ、当初の研究計画通りに研究が進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度はこれまで集めた情報をまとめて、「日韓海洋資源比較辞典」の作成にとりかかる。なるべく多くの人々に利用してもらうために、当初のよていにはなかった、ウエッブによる辞典の公表を進めていく予定である。作成にあたっての補充調査も行う。 また、実際の展覧会において、どのように翻訳をすることで、展示の理解が深まるかの検討をはじめる。
|