研究課題
山地源流域の湧水における滞留時間に関し、その時空間変動を示すデータが得られた。無降雨時においては、湧水の流量が多い時期ほど短い滞留時間が示され、反対に流量の少ない時期には長い滞留時間が認められた。一方、降雨流出時においては、湧水の流量が多くなるほど滞留時間が長くなるという、反対の傾向がみられた。また、こうした現象に加え、湧水・地下水中の滞留時間と全菌数との間に、関係性が見いだされた。無降雨時においては、湧水流量の多い条件下においては、浅層を流動した相対的に短い滞留時間からなる地下水が湧水に寄与し、湧水流量の少ない条件下においては、深層を流動した相対的に長い滞留時間からなる地下水が寄与したものと考えられた。一方、この傾向には顕著な変動もみられた。とくに、降雨流出後の基底流出時においては、斜面内の地下水が相対的に古い滞留時間を示す一方で、湧水中の微生物数は増加し、また土壌由来の日群集構成がみられた。さらに、国内外の各地山地源流域等における湧水に関し、滞留時間と微生物の全菌数との関係に関するデータを蓄積した。その結果、湧水の滞留時間が長くなるとともに、全菌数は一定値に収斂する傾向があることが示された。また、その一定値は、少なくとも我が国とニュージーランドとにおいて、異なることが示唆された。湧水の滞留時間が同程度である我が国、ニュージーランドにおいて、全菌数の収斂値が異なることは、地質、土壌、温度等の場の条件に加え、水循環プロセスそのものの違いを反映している可能性も考えられ、今後さらなるデータの蓄積が必要であると思われる。基底流出時と降雨流出時において、湧水の滞留時間ならびに微生物数および群集構成に違いが確認されたことにより、地下水等の時間情報を評価する上で、新たな手法として微生物情報を利用することの有効性が示唆された。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件)
水文・水資源学会誌
巻: 32 ページ: 245-254
https://doi.org/10.3178/jjshwr.32.245
Isotopes in Environmental and Health Studies
巻: 55 ページ: 566-587
https://doi.org/10.1080/10256016.2019.1673746
Journal of Hydrology (New Zealand)
巻: 57 ページ: 81-94
Hydrological Processes
巻: 20 ページ: 892-904
https://doi.org/10.1002/hyp.13398