研究課題
本研究では2014年11月の長野県北部の地震(長野県神城断層地震)の発生を受けて、活断層によって発生する一回り小さな地震を考慮した地震発生予測モデルの構築を目指している。2016年度は、地震を起こした糸魚川-静岡構造線活断層帯北部の神城断層において、過去の断層活動時期とその変位量(規模)を明らかにするための変動地形調査、トレンチ掘削調査等を実施した。変動地形調査では、米軍が撮影した1万分の1航空写真の写真測量を実施し、人工改変で消失した地形を含めた変動地形を復元した上で、写真測量から改変前の地形断面測量を実施し、変位量を計測した。それらを断層の走向方向にプロットして神城断層の変位量分布を明らかにした。また変動地形の複数地点で年代測定を実施し、変動地形の形成時期=断層活動時期と地震時変位量とその傾向を明らかにした。また北部の森上地区においては、トレンチ掘削調査を実施した。トレンチ調査では、段丘構成層とその上位の黒色土層が認められ、それらが明瞭な断層によって変位する様子を観察できた。地層の変位と上載層との被覆関係、地層の分布の様子などから、過去少なくとも3回程度の活動を示唆する成果を得ることができた。トレンチ調査を実施した森上地点は、2014年地震では活動しなかったトレースであり、最新活動はおよそ1500年前以降であることがあきらかになった。また森上地区の別の断層トレースにおいて、変動地形の離水年代を明らかにするピット掘削調査、ボーリング調査を実施した。こちらは現在年代測定等解析を実施している。
2: おおむね順調に進展している
2016年度には当初想定どおり、トレンチ掘削調査を実施し、古地震の活動時期を明らかにすることができた。また写真測量による変動地形調査とピット掘削による離水年代の決定についても、複数地点明らかにして、変位量とその分布をある程度解明できた。加えて、地震後に各種調査研究機関が古地震活動履歴の解明を目的とした調査を実施しており、これら成果と合わせることで、過去の活動時期や変位量に関するデータの蓄積が相乗的に進んでいることが大きい。これまでのデータの整理を進めつつ、他機関の成果とも合わせながら、2017年度の調査を進めていく予定である。
2017年度も引き続き神城断層を中心とした糸魚川ー静岡構造線活断層帯北部における古地震活動時期とその変位量の解明を進める予定である。2014年地震の地表地震断層が出現し、従来活断層の指摘がなかった地点などにおいて、どのような活動があったのかを解明する。また変動地形の離水年代と変位量に関するデータの充実をはかり、神城断層の過去複数回の変位量と活動時期の関係解明をめざす。また2016年は岩手県内陸北部地震で活動した篠崎地震断層など、他地域における一まわり小さな地震の観察も行った。2000年新潟県中越地震など、神城断層以外の小規模な地震断層についても検討を行い、神城断層との比較可能性について検討していく予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 8件、 謝辞記載あり 8件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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