研究課題/領域番号 |
16H03115
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
横山 智 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30363518)
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研究分担者 |
竹中 千里 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (40240808)
廣田 勲 岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (50572814)
富田 晋介 名古屋大学, 環境学研究科, 特任准教授 (60378966)
吉田 国光 金沢大学, 学校教育系, 准教授 (70599703)
岡本 耕平 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (90201988)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ラオス / 人口動態 / 再生産 / 生業 / 小規模社会集団 |
研究実績の概要 |
経済統合が進展する状況下の日本、ベトナム、ラオスの3カ国において、農家世帯単位での家計および自然資源利用に関する調査を実施した。なお、今年度からタイにおいて、社会経済開発に伴う食と生業の変化に関する調査を開始した。 日本における研究は、水田農業の組織化の形態を、農地利用をめぐるガバナンスの再編という視点から、岩手県一関市、宮城県色麻町および美里町、青森県つがる市において実施した。また、国内各地における有機・減農薬稲ワラの利用に関する情報収集を開始した。そして、生態系に関する調査では、農山村地域で利用されている山菜(タカノツメ、コシアブラ、リョウブ)の価値と持続可能性を、微量元素の視点から追及した。 ベトナムにおける研究では、北部ソンラー省イエンチャウ県の調査結果について2本の論文が掲載された。また、カウンターパート機関であるベトナム国立農業大学環境学部がソンラー省の土地利用と生業変化について世帯レベルでの詳細な調査を実施した。 ラオスにおける研究では、北部山地部の急速に道路交通網が整備されつつある農村における生業と自然資源利用動態について、フアパン県ソーン郡の4カ村を市場からの交通アクセスの傾度に応じて選定し比較調査を行った。聞き取り調査の結果、全ての村落において、林産物が重要な現金収入源である一方、アクセスのいい村落では、より林産物を市場に出しやすい環境にあり、林産物の試行的栽培、あるいは他の現金収入源になりそうな作物の導入が急速に進んでいたが、アクセスの悪い村落では、林産物への依存が大きく、代替の生業手段やより高付加価値の移行が困難になっている現状が明らかとなった。 また今年度は、新たにタイ・ナコーンパノム県を中心に、社会経済開発(とくに流通の進展)などが、小農の食と生業にどのような変化をもたらしたのか、魚介類の伝統的発酵食品に関して調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
科研開始後3年を経過し、これまでの調査結果を、国内外の学会で発表し、今年度は査読付きの国際誌に論文が計4本掲載された。 ラオスの研究に関しては、森林産物の生態学的研究および家畜飼育に関する市場経済の影響に関する研究が順調に進捗しており、当初の研究計画どおりに進んでいる。 日本の小農研究に関しては、シンガポール国立大学の“Asian Smallholders: Transformation and Persistence”との共同研究プロジェクトとしても実施しており、すでに原稿をAmsterdam University Pressに提出し、書籍出版を待っている状況である。ただし、石川県能美市の営農調査結果について、英文学術誌へ投稿しているが、現在、苦戦しており、新しい雑誌に投稿する準備をしている。 ベトナムにおける研究では、2本の論文が掲載され、さらにカウンターパート機関のベトナム国立農業大学からは、"ASSESSMENT OF AGRICULTURAL DEVELOPMENT TOWARD INTEGRATED MARKET IN YEN CHAU DISTRICT SON LA PROVINCE: FINAL REPORT”(34ページ)が提出され、地域統合と小農の変化についての全貌が明らかになった。 今年度から調査に加えたタイに関しても予備的調査を終了し、今年度中には、経済発展に伴う流通の発展による小農の食と生業の変化についての調査結果を出せるものと確信している。
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今後の研究の推進方策 |
調査地は前年度と同様に地域統合下の環境にある、日本、べトナム、ラオス、タイとする。それらの地域において、農家の世帯単位での生業、土地利用 、自然環境利用の動態についての補完調査を実施し、これまでの研究結果を論文にすることを目標とする。 日本の研究に関しては、経済的な側面に関しては、宮城県色麻町および美里町、青森県つがる市における調査を継続して実施する。また、昨年度より、新たに有機・減農薬稲ワラの利用に関する情報収集を開始したので、今年度中に実際に調査を実施して、成果をまとめることを目標にする。そして、生態系に関する調査に関しては、農山村で利用されている山菜のコシアブラに焦点をあて、農山村における経済的な価値とともに、その利用形態および森林における持続可能性について追及する。 ラオスにおいては、これまでの調査結果のより進んだ分析を行うとともに、まとめの作業を行い、学会や論文等で発表を行う。また前年度調査を行ったラオス北部山地部の農村において、必要に応じて補足的調査を行う。 ベトナムにおいては、すでに現地調査は終了しているため、ラオスやタイなどの隣接国との比較分析を中心に実施する。また、ベトナム国立農業大学環境学部がこれまで実施したソンラー省の土地利用と生業変化について、論文もしくは研究報告書を作成する。 タイに関しては、昨年度と同様にナコーンパノム県を中心に、社会経済開発が小農の食と生業にどのような変化をもたらしたのか、引き続き調査を実施してまとめる。 今年度は、最終年度になるため、上記の発展段階の異なる複数の国々が、経済統合によって、どのような影響を受け、その結果、農山村地域の小農がいかなる変化を経験したのかを分析する。
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