研究課題/領域番号 |
16H03121
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
武藤 滋夫 東京理科大学, 経営学部ビジネスエコノミクス学科, 教授 (50126330)
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研究分担者 |
岸本 信 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (00610560)
河崎 亮 東京工業大学, 工学院, 准教授 (20579619)
坂東 桂介 東京理科大学, 経営学部ビジネスエコノミクス学科, 助教 (50735412)
上代 雄介 関東学院大学, 経済学部, 准教授 (70588201)
大和 毅彦 東京工業大学, 工学院, 教授 (90246778)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | パテントライセンス / パテントプール / 非協力ゲーム / 協力ゲーム / 交渉 / 実験 / 安定集合 / 先見的安定集合 |
研究実績の概要 |
本年度は2017年度に行ったパテントプールの実態調査から明らかになったいくつかの事実に基づき,ゲーム理論に基づくパテントプール形成のゲーム理論モデルの構築といくつかの解概念に基づく分析を行い,以下の成果を得た。 (1)特性関数形協力ゲームおよび分割関数形協力ゲームとして定式化し,全員提携が維持されるような特許料収入の分配をコア,仁,シャープレイ値などの解を用いて分析した。 (2)(1)の分析と従来の非協力ゲームの結果との比較・検証を行った。 (3)2017年6月17日から21日に,アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校で開催されたInternational Conference on Game Theoryに,研究代表者武藤がパテントライセンスのセッションの講演者として招待されたが,所属大学における管理運営の仕事のため出席できず,過去の科研費研究で研究分担者であった渡邊直樹氏(慶應義塾大学大学院経営管理研究科)に本研究の連携研究者として加わってもらい,本研究の共同研究者である岸本信氏,過去の科研費研究で研究分担者であった平井俊之氏(富山大学経済学部)と私武藤のこれまでの共同研究をまとめて報告してもらった。平井氏にも本年度から本研究の連携研究者として加わってもらった。渡邊氏の報告には,この分野の研究を世界的にリードする多くの出席者から,本科研費研究の今後の方向性について数多くの有益なコメントが寄せられた。 なお,昨年度九州大学で開催されたThe Seventh Asia-Pacific Innovation Conferenceにおいて私武藤と共同でHarvard大学のJoseph Lerner氏を招待した青木玲子氏(公正取引委員会委員)にも本年度から連携研究者として加わってもらっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は2017年度に行ったパテントプールの実態調査から明らかになったいくつかの事実に基づき,ゲーム理論に基づくパテントプール形成のゲーム理論モデルの構築といくつかの解概念に基づく分析を行い,上記研究実績の概要に記載した成果を得た。各項目について進捗状況を述べる。 (1)特性関数形ゲームおよび分割関数形協力ゲームによる定式化とコア,仁,シャープレイ値による分析:昨年度行ったパテント・プールの実態調査に基づき,パテントプールの形成を特性関数形協力ゲーム,分割関数形協力ゲームとして定式化した。通常行われている特許保有数に比例した特許料収入の分配に基づいて配分を定義し,コアを用いて全員がパテントプールに参加する状態が安定となるのはごく限られた場合であること,およびどのような提携構造が安定になるかを明らかにした。次いで,シャープレイ値,仁を用いて,これらの解に基づく特許料収入の分配により,全員参加のパテントプールが安定になるかどうか,またどのような提携構造が安定になるかを分析した。特性関数形協力ゲーム,分割関数形協力ゲームによる分析では以上のように様々な新たな知見が得られており,研究は順調に進展しているといえる。 (2)(1),(2)の結果と従来の非協力ゲームによる分析との比較・検証:(1)により,従来の非協力ゲームによる分析では得られていなかった新たな知見が多く得られ,新たな非協力ゲームによる定式化の基礎が得られた。研究は順調に進展しているといえる。 (3)国際会議等への参加:研究代表者が所属大学における管理運営に追われ,当初の予定通りには海外渡航ができなかった。ただ,研究分担者及び新たに加わった連携研究者に研究代表者の代理として学会に参加してもらい,今後の研究の方向性について有益な議論を行うことができた。したがって,この点においてもおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,昨年度及び本年度の研究成果をもとに,以下の通り研究を進める。 (1)先見的安定集合に基づいてパテントプール形成の分析を行うための理論モデルを構築し,すべての特許保有者を包含するようなパテントプールが形成されるかどうかを理論的に詳しく検討する。 (2)(1)の結果を従来の非協力ゲームによる分析,昨年度行った特性関数形,分割関数形協力ゲームによる分析結果と比較し,相違点を詳しく分析する。 (3)特性関数形協力ゲーム,分割関数形協力ゲーム,先見的安定集合による分析をもとに,すべての特許保有者を包含するようなパテントプールを形成するメカニズムの可能性を分析する。 (4)研究代表者,研究分担者,連携研究者が,自らの所属する国内外の学会に積極的に参加し,(1),(2),(3)の各点について,研究成果を発表して情報発信を行うとともに,研究の方向性,困難な点への対処法などについて,情報収集,情報交換を行う。たとえば,2018年6月11日から13日に台湾のAcademia Sinicaにいて開催されるSAET(Society for the Advancement of Economic Theory)2018には,連携研究者の平井俊行が研究代表者との共同研究を発表することが決定している。
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