研究課題/領域番号 |
16H03127
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
石島 博 中央大学, その他の研究科, 教授 (20317308)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ファイナンス / 不動産 / 価格評価 / アセット・プライシング / 日米比較 |
研究実績の概要 |
本研究は、ファイナンス理論により不動産価格評価を大幅に高精度化した「ヘドニックDCF法」の理論を確立する。その上で、日米の不動産市場における価格形成の2つの課題、1)地域格差、2)時系列変動について、広さ・築年数・駅徒歩などの不動産属性に関する需給という「内部要因」と、不動産取得ローン金利や株価をはじめとするマクロ経済要因という「外部要因」が生むメカニズムを、実証分析を通じて解明することを目的とする。その目的の達成のため、両国での不動産市場の価格形成の比較検討や議論を行うことにより、不動産価格に関する地域格差や時系列変動の解明を加速し国際レベルの研究成果に結実する。ひいては、金融資産と同様に、不動産にファイナンス理論を適用できるよう、「ファイナンスのフロンティア拡張」に貢献することとする。 このような目的の下、研究計画の第2年度である今年度は、研究計画調書の研究計画・方法で述べたように、前年度に構築した「ヘドニックDCF法」に基づき、日本の不動産市場における実証分析を行った。 研究成果として、国際会議や国内会議での報告を積極的に行い、研究の方向性を確認・修正しながら、査読付き学術誌への投稿を行い、掲載が決定された。 一方、高精度な不動産価格評価理論を確立する基盤として、ファイナンス分野における「多期間にわたる動的な資産価格モデルの展開」について、包括的な観点より整理・再構築し学術図書して刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、研究計画調書の研究計画・方法に述べたように、前年度に構築した「ヘドニックDCF法」に基づき、次の2つのフェーズで構成される日本の不動産市場における実証分析を行った。利用したデータは、国交省・土地総合情報システムより取得した、47都道府県、過去39四半期分にわたる、マンションと戸建住宅の不動産価格とその属性に関するものである。まず、①「ヘドニック価格カーネル」により、不動産属性に対する需給という「内部要因」に起因する不動産価格における地域格差を分析する。具体的には、広さや築年数といった不動産を特徴づける属性の価格について、一物一価の原則に基づいた無裁定価格を固定効果と、地域格差に起因する確率的な乖離を変量効果によって捉える混合効果モデルによって推定する。そうした内部要因をコントロールした上で、②「キャッシュフロー価格カーネル」により、長期・短期金利や株価などのマクロ経済要因という「外部要因」に起因する不動産価格の時系列変動を解析した。詳細な分析の結果、(1) 不動産価格について内部要因をコントロールした上でもマクロ経済要因は不動産価格を説明し得ることや、(2) 日本銀行の量的質的金融緩和政策(QQE)による低金利が不動産価格形成の構造を統計的に有意に変化させ、(3) QQEは不動産価格を有意に押し上げたことを明らかにした。研究計画に沿って一定の研究成果を上げているのでさらに、学会発表等での議論を通じて得た新たな方向性より、実証分析を深化することとする。
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今後の研究の推進方策 |
5年間にわたる本研究計画の第3年度にあたる2018年度は、中間成果を取りまとめることに注力する。具体的には、ヘドニックDCF法の理論と、これを日本不動産市場に応用した、不動産価格における地域格差・時系列変動の実証分析に関する論文を取りまとめる。その取りまとめの過程において、前年度より継続して、「ヘドニックDCF法」の理論を展開・発展させると共に、本理論に基づいた日本の不動産市場における実証分析を深化させることとする。 さらに、公開型の研究会を開催するとともに国内・国外の会議にて、取りまとめた研究を積極的に発表し、参加者と日米不動産市場での価格生成に関して議論を深め、その反映を真摯に行ったうえで学術誌への投稿をインテンシブに行う。
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