研究課題/領域番号 |
16H03129
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
椎名 達雄 千葉大学, 大学院融合科学研究科, 准教授 (80304187)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ライダー / LED / ランダム変調 / ホトンカウンタ / FPGA |
研究実績の概要 |
LEDライダーではLEDパルス光の発光は一定の高速周期(500kHz)で行っている。LEDパルス発光をトリガとしてホトンカウンタと同期している。このLEDパルス発光を擬似ランダム変調させ、信号対雑音比の向上を図る。特に背景光が多い昼間の観測で、微弱なエコー受光の期待値を最大化させた受光を可能とする特徴がある。本研究では、擬似ランダム変調を行った際の変調コード長に依存した空間分解能の劣化をパルス積算過程の中で補い、ホトンカウンタが持つ高分解(1ns)を得ることを目的とした。そのための数値解析を先行させ、パルス幅(>10ns)と繰り返し周波数(>1MHz)、ホトンカウンタ分解能(1ns)、擬似ランダム変調符丁コード長との間の最適値を得る。 具体的な開発事項として、擬似ランダム変調を搭載したLEDパルス駆動回路を開発した。ホトンカウンタとの同期が不可欠であるため、高速ホトンカウンタからのクロック信号に同期した擬似ランダムコードの生成を行い、それをLED駆動回路へと引込む構成とした。発振回路とLEDパルス発光回路を分離し、入力した外部トリガ信号で発光できるよう構成を新しくした。これによって、ホトンカウンタの高速クロックによって変調コードのシフトが可能となった。コードの復調は同じホトンカウンタ内のFPGA(Spartan6)で高速処理を行うことで、現行の500kHzのパルス光繰り返しの積算によるS/N比と空間分解能(1ns=0.15m)を維持しながら、昼間計測を実現する。 擬似ランダムコードの生成はホトンカウンタを構成するFPGAに組み込んだ。コード長やクロック数を制御できるようにし、ライダーの計測距離と分解能、積算数との関連で最適化を図る。次年度からライダー構成での実応用を図る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画したLEDライダーの構築と擬似ランダムコードの生成を含むホトンカウンタの製作を終えた。パルス駆動回路をこれまでの一定周期のものから、ホトンカウンタで生成した変調コードによる擬似ランダムなパルス列の発光を実現した。ライダーの構成での基本送受信特性も確認しており、今後ライダーの計測距離と分解能、積算数との関連で最適化を図る。次年度からライダー構成での実応用を図る。 本手法は積算回数が信号対雑音比を決めるだけでなく、復調時の符丁コード長に依存した分解能を決めることにもなる。従って、計測対象大気・ガスの濃度や分布によっても可視化の状況が変化することが想定される。あらかじめ、数値解析による条件を選定し、実際に搭載するランダム変調の符丁コード長を決めるようにする。そのため、これまでに報告されてきた擬似ランダム変調ライダーに関する文献を調査し、本LEDライダーに応用しやすい変調コード、及びその長さに関する検討を行った。LEDライダーに擬似ランダム変調を搭載した際の高分解データ処理アルゴリズムを検討している。信号対雑音比と高い空間分解能を維持しながら、昼間計測を実現することを目指す。 検討項目として挙がってきたことは次のことである。計測範囲と距離分解能はライダーの特性として決まるため、擬似ランダム変調を導入すると、その変調コード長と復調プロセスによって積算時間と分解能が劣化する。それをカバーするための最適なパルス繰り返し周波数を現行のFPGAで実現できるか、他のFPGA仕様でも検討している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降の研究計画として以下の予定を掲げている。 ・高速スキャニングによるリアルタイムでの局所大気の可視化を図る。擬似ランダム変調による変調コード長を考慮したスキャニング速度を事前に装置の仕様から定める。実際には対象大気・ガスの信号強度、分布、濃度に依存するため、対象毎に解析値を求め、実験によって得られた画像との相関を定量的に評価する。 ・具体的応用としての特定ガス実時間モニタリングによる可視化の検討を行う。対象とするガスをメタンで始めるが、その他にも、aerosol(風)の可視化等、現場に則した画像の視覚化を検討する。近距離大気は動きが早く、かつ地表面上の構造物の配置や材質にも依存した変化をもつ。実験状況を簡素化し、モデル実験を行うことで、可視化に向けた実用性を探っていく。
次年度はリアルタイムでの局所大気の可視化を目指して、研究を進めていく。 実環境(測定現場)ではリアルタイム性が重視される。対象ガスに対する人の安全性の確保や状況変化の速度から見積もられる事故発生までの時間猶予等、これまでの定点計測による接触式センサでは成し得なかった分布状況の把握を、遠隔光計測によるリアルタイムでの局所大気の可視化によって実現する。送受信光学系全体をトラッカー上に搭載し、高速スキャニングによるリアルタイムでの局所大気の可視化を実現する。送受信一体とした光学系を軽量・コンパクトにできるLEDライダーであれば大きなスキャニングミラーを2軸で走査したこれまでのライダーと異なり、観測方向に直接光学系を向けた観測が可能である。具体的な開発事項として擬似ランダム変調の条件を考慮した上で、高速スキャニングによる画像の可視化、リアルタイムでの処理を実現する。その際、擬似ランダム変調による符丁コード長を考慮したスキャニング速度を得るとともに、RHI(高度-水平断面)走査時の空間画素の大きさを考察する。
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