研究課題/領域番号 |
16H03129
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
椎名 達雄 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80304187)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ライダー / LED / 局所大気 / ガス / 擬似ランダム変調 / 可視化 |
研究実績の概要 |
本研究ではLEDパルス発光を擬似ランダム変調させ、微弱なLEDライダーにおける信号対雑音比の向上を図る。特に背景光が多い昼間の観測で、微弱なエコー受光の期待値を最大化させた受光を可能とすることで、局所大気・ガスの可視化を目指している。 擬似ランダム変調を搭載したLEDライダーは送信光強度の最適化を図り、その具体的なパルス出力をもとに、擬似ランダム変調のコード長、変調周波数、ならびに実質的な分解能、積算数の設計、検討を行った。数値解析によるシミュレーションによって、装置パラメータを設定し、標準大気ならびに特定ガス(ラマン散乱を想定)による解析を進めている。現在使用しているデバイスの仕様をパラメータとして、擬似ランダム変調導入による信号対雑音比の改善を数値解析として検討している。その最適化を実装置の変調コードの仕様としてフィードバックする。 一方で、LEDライダーによって局所大気・ガスの可視化を行う手立てとして、送信光波長と同じ波長で計測するミーライダーと、特定ガスを対象としたラマンライダーを作成した。この2台のLEDライダーを同期して計測を行った。大気計測では、ミーライダーでエアロゾル、ラマンライダーでは大気窒素、ならびに水蒸気を計測した。いずれも現状は一定周期のパルス光計測ため、昼間の計測はできず、夜ならびに室内での測定結果となった。波浪の動的な観測や、人口竜巻の定点観測ならびに観測方向をスキャニングした局所大気・ガスの可視化を試みた。これらの測定結果を現状の信号対雑音比とみなし、この結果をもとに、擬似ランダム変調を搭載したLEDライダーの信号対雑音比の改善を評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度には高速ホトンカウンタからのクロック信号に同期した擬似ランダム変調コードの生成を行い、そのトリガ信号でLEDパルス光を発振させるまでを行った。平成29年度ではまず、発振させる光強度を最適化させるための基礎実験を行った。これは一定周期(500kHz)のパルス発振をさせていた場合と比べ、擬似ランダム変調に変更したことでLEDに流す平均電流がCW発振に近づくため、パルスあたりの発光光量を制限する必要があることによる。結果として、パルスあたりの出力を0.5W(=5nJ/10ns相当の出力まで発振可能であった。この値をもとに、擬似ランダム変調のコード長、変調周波数、ならびに実質的な分解能、積算数の設計、検討を行った。実際のLEDライダーの仕様をもとにシミュレーションを作成し、先の擬似ランダム変調の仕様を最適化させて実装置への導入を図った。 一方で、LEDライダーによって局所大気・ガスの可視化を具現化すべく、送信光波長と同じ波長で計測するミーライダーと、特定ガスを対象としてガス種に応じて波長シフトしたラマン散乱光を計測するラマンライダーを作成した。この2台で同期計測を行い、大気エアロゾル、窒素、水蒸気の時間応答、波浪及び表層大気の観測、ならびに人口竜巻発生装置での蒸気竜巻の計測を行った。動きのある計測対象を定点から観測、ならびに対象をスキャニングして計測し、局所大気・ガスの可視化を行った。いずれの計測も夜間ならびに人工照明下での計測である。これらの測定結果を現状の信号対雑音比とみなし、擬似ランダム変調の導入の効果を検討していく。 次年度擬似ランダム変調を搭載したLEDライダーによって信号対雑音比の改善を確認するとともに、実環境下での局所大気・ガスの計測を試みる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は擬似ランダム変調を実装したLEDライダーを実用し、リアルタイムでの局所大気・ガスの可視化を目指す。 実環境(測定現場)ではリアルタイム性が重視される。対象ガスに対する人の安全性の確保や状況変化の速度から見積もられる事故発生までの時間猶予等、これまでの定点計測による接触式センサでは成し得なかった分布状況の把握を、遠隔光計測によるリアルタイムでの局所大気の可視化によって実現する。 送受信光学系全体をトラッカー(小型スキャナー)上に搭載し、リアルタイムでの局所大気の可視化を実現する。一定周期のパルス光によるLEDライダーでは局所大気・ガスの可視化を実現したが、擬似ランダム変調による信号対雑音比の改善を図り、日中野外での観測を試みる。合わせて小型のスキャニング機構にLEDライダーを搭載することで、監視カメラのように首振りによって観測エリア内を画像化できる。具体的な開発事項としては、擬似ランダム変調の変調コード長ならびにデータサンプリングの条件を考慮した上で、信号対雑音比の改善ならびに時空間分解能を評価する。また、首振り操作によるスキャニングによる画像化、ならびに高速スキャンによる局所大気・ガスの挙動の可視化を実現する。信号対雑音比の改善は日中野外での観測を可能とする。実観測環境で局所大気ならびにガスの可視化を目指す。また、研究のフィードバックとして日中野外での観測に十分な信号対雑音比が得られない場合、あらためてLED光源の選定をCW光量の観点で検討し、開発した数値解析(シミュレーション)による検討を得て、実装置の改善に繋げる。
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