研究課題/領域番号 |
16H03136
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
五福 明夫 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (20170475)
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研究分担者 |
高橋 信 東北大学, 工学研究科, 教授 (00243098)
大場 恭子 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 企画調整室, 技術副主幹 (20367452)
杉原 太郎 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (50401948)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 機能モデル / 代替対応操作手順生成 / コンピュータベース手順書 / 操作手順書 / トレーニングマニュアル / レジリエンス・エンジニアリング / Safety-II |
研究実績の概要 |
プラント緊急時の代替対応操作を生成・提示するシステムの開発に関して,機能モデリング手法の1つであるマルチ・レベル・フローモデリング(MFM)による機能モデルを基礎として、平成28年度に開発した代替対応操作手順を生成するアルゴリズムの適用を図った.まず、加圧水型原子力プラントのMFMモデルを構築し、代替対応操作手順生成のアルゴリズムを適用して、すでに電力会社において設定されている代替対応操作であるアクシデントマネジメントと同等の手順が生成されること、また、緊急時の対応操作として効果のある他の操作手順も生成できることから、手法の有効性を確認した。さらに、代替対応操作手順生成手法の核となる機能モデルを基礎とした影響波及推論手法を、コンピュータベースの運転手順書に欠けている操作の効果などの重要な付加的情報生成へと応用した。 自立的判断能力を高める操作手順書のあり方に関して、ボイラー型の発電プラントを模擬したセミスケールの実験室レベルの模擬プラントの立ち上げ時の操作を対象として、通常型の手順書を用いた場合の操作ミス(行うべき操作の不実行や順序の変更など)の種類について、実験的に検討した。その結果を踏まえて、新人運転員の操作学習を支援するためのトレーニングマニュアルを検討・開発し、それを用いた場合の操作スキル向上への効果について模擬プラントの操作により検討した。その結果、トレーニングマニュアルを使用している間は操作ミスが減少するが、それは操作の理解が向上したのではなく、操作ミスを犯さないための工夫を施したトレーニングマニュアルに頼っているからであると考察され、また理解度向上には操作ミスの指摘が効果があることが示唆された。 一方、レジリエンス・エンジニアリングのSafety-IIの概念に基づいて、福島第一発電所における事故影響を緩和した良好事例の背後要因について分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プラント緊急時の代替対応操作を生成・提示するシステムの開発に関しては,代替対応操作の生成手法の加圧水型原子力プラントを対象とした有効性確認が予定より早く完了した。さらに、代替対応操作手順生成手法の核となる機能モデルを基礎とした影響波及推論手法を、コンピュータベースの運転手順書に欠けている操作の効果などの重要な付加的情報生成へと応用した。 自立的判断能力を高める操作手順書のあり方に関して、セミスケールの実験室レベルの模擬プラントの立ち上げ時の操作を対象として、通常型の手順書を用いた場合の操作ミス(行うべき操作の不実行や順序の変更など)の種類について、実験的に検討し、その結果から新人運転員の操作学習を支援するためのトレーニングマニュアルを検討・開発し、それを用いた場合の操作スキル向上への効果について模擬プラントの操作により検討した。しかしながら、操作指示文の記述法の具体性などを変更した場合の操作パフォーマンスへの影響の検討は、実験を準備している段階に止まった。 一方、レジリエンス・エンジニアリングのSafety-IIの概念に基づいた福島第一発電所における事故影響を緩和した良好事例の背後要因についての分析は、予定通り実施しできた。
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今後の研究の推進方策 |
代替対応操作手順の生成手法に関しては、MFMの提唱者であるデンマーク工科大学のMorten Lind教授のグループが開発している、MFMモデル構築ツールに手法を実装する予定であり、また、沸騰水型原子力発電所への適用も実施したい。 操作手順書のあり方に関しては、操作指示文の記述法の具体性などを変更した場合の操作パフォーマンスへの影響の検討の準備において、まず、通常マニュアルのどこを見て操作を行っているかを明らかにして、操作の記述場所と操作ミスとの関連性を検討することが必要であることが判明したため、まず、それを実験的に検討し、その後、操作指示文の記述法の具体性などを変更した場合の操作パフォーマンスへの影響の検討を実施したい。 一方、レジリエンス・エンジニアリングのSafety-IIの概念に基づいた福島第一発電所における事故影響を緩和した良好事例の背後要因についての分析結果を踏まえて、緊急時に柔軟で適切な対応ができる能力を向上させて、大規模プラントの自主的安全性を高める総合的な教育・訓練メニューをいくつか提案する.
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