研究課題/領域番号 |
16H03143
|
研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
齊藤 大樹 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00225715)
|
研究分担者 |
松本 幸大 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00435447)
林 和宏 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40725636)
章 忠 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50254579)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 南海トラフ巨大地震 / 防災拠点建物 / 強震観測 / シミュレーション解析 / 耐震診断 / センシング / ひび割れ検出 / 地震対策支援 |
研究実績の概要 |
東海地域では、南海トラフ巨大地震の際に最悪のケースで震度7の揺れが想定されており、現行の耐震基準で建設された建物でも、被害を免れることは難しい。学校や市庁舎のように地震時に地域の防災拠点として機能すべき公共建物については、想定される被害を予測し、事前に対策を講じる必要がある。また、実際に地震が起きた際には、施設の安全性と継続使用の可否を即座に把握しなくてはならない。研究代表者らは、建物の地震時挙動シミュレーション・ソフトウェアを独自に開発・公開し、建物管理者が迅速に建物の耐震性を評価できる環境構築を進めている。本研究は、建物の揺れや損傷を検知するセンシング技術を融合させることで、シミュレーションの精度を向上させ、被害箇所の同定などを可能とする地震対策支援ツールの開発を行い、防災拠点建物群への実装を図ることを目的とする。 平成28年10月には、建物の即時耐震性能評価に向けて、豊橋市庁舎にIT強震計を設置し、建物の常時観測を行っている。また、地震応答解析ソフトウェアSTERA_3Dを用いて、建物のモデルを作成し、観測結果から自動的に耐震診断を行うシステムを開発した。これまで、平成28年11月19日に発生した和歌山県南部の地震(マグニチュード5.3)や平成30年4月14日の愛知県西部の地震(マグニチュード4.6)において、建物の揺れを分析し、その結果を豊橋市の防災担当者に速報として提供した。平成29年12月には豊橋市中消防署に、平成30年5月には新城市庁舎にIT強震計を設置し、順次、観測網を拡大している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
豊橋市および新城市の協力により、豊橋市庁舎2棟、豊橋市中消防署、新城市庁舎の計4棟の防災拠点建物へのLAN強震計の設置を行った。また、それぞれの建物のシミュレーションモデルの構築や、将来の南海トラフ地震に対する安全性検証を実施した。これまで、遠方の地震による小さな揺れも精度よく観測し、その結果を市の防災担当者に速報として提供することができた。また、平成30年4月14日の愛知県西部の地震を受けて、16日には本研究の成果がテレビ報道に取り上げられるなど、社会的な注目を集めた。このことからも、研究のサブテーマ1「センシング技術を融合した高精度シミュレーション技術の開発」およびサブテーマ3「防災拠点建物群の耐震性能データベースの構築と地震対策支援ツールの開発」は予定通りの進捗である。サブテーマ2「センシング技術を活用した安全かつ効率的な被災度判定技術の開発」については、ひび割れ検出法として、Canny法とWavelet変換による方法を比較し、その有効性を検証した。
|
今後の研究の推進方策 |
サブテーマ1「センシング技術を融合した高精度シミュレーション技術の開発」においては、すでに稼働中の自動耐震システムを改良し、多質点系モデルによる簡易診断用と3次元骨組モデルによる詳細診断用の2段階診断システムを導入する。とくに多質点系モデルについては、せん断と曲げ特性のそれぞれの非線形特性を考慮する新しい手法を開発し、診断精度の向上を図る。さらに、地盤・建物の相互作用ばねを組み入れることができるように、ソフトウェアの改良を行う。 サブテーマ2「センシング技術を活用した安全かつ効率的な被災度判定技術の開発」については、ひび割れ検出ソフトの精度向上を図る。 サブテーマ3「防災拠点建物群の耐震性能データベースの構築と地震対策支援ツールの開発」については、東三河地域の他の防災拠点建物についても、順次、LAN地震計の設置に向けた交渉を自治体と行い、観測ネットワークを拡張していく。
|