研究課題/領域番号 |
16H03145
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
眞木 雅之 鹿児島大学, 地震火山地域防災センター, 特任教授 (10360364)
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研究分担者 |
黒光 貴峰 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (50452925)
佐藤 英一 気象庁気象研究所, 火山研究部, 主任研究官 (80614023)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 火山噴火 / 気象レーダ / 降水 / 噴火雲 / 防災教育 / ジオパーク |
研究実績の概要 |
本研究は,これまでほとんどわかっていない降水時の爆発的噴火を対象に,先端的気象レーダによる観測をおこない(課題1),噴煙柱・火山灰雲の実態を明らかにし,運動学的及び微物理学過程を考慮した噴火現象の概念モデルを提案する(課題2).更に,研究内容や成果をわかりやすく紹介する教育用教材や一般向けパンフレットの作成,シンポジウムの開催などを通じて噴火現象と火山防災に関する知識の普及を図り,地域社会の防災力向上に役立てること(課題3)を目的としている.以下,3つの課題についての研究成果の概要を述べる. 課題1では,桜島の噴火に対する気象レーダー観測を行い、曇天時や雨天時におけるレーダーパラメータの変化を得ることができた。噴煙エコーと降水粒子との違いを認識することが出来る事例があった一方で、噴火から時間が経つにつれて周囲の降水(雲)のエコーと同化し、判別が難しくなるという事例も得られた。 課題2では,降水と降灰を区別するためのアルゴリズムを開発した.実データを用いたアルゴリズムの検証結果は概ね良好であったが,弱い降水と噴火が混在する場合,両者の区別は困難であった.船舶レーダーの活用に関しては,噴火の自動検出,噴火期間,噴煙高度の推定が可能になった.これらの成果により降水時の噴煙柱・火山灰雲の実態の理解が進むことが期待される. 課題3では,前年度に立案した授業ならびに教材を改善するとともに,教育現場で実践し,有効性の検証を行った.立案した授業は,中学校第1学年理科「火をふく大地」の単元で,指導計画として全8時間,教育現場での実践は2018年12月から2019年2月に行った.有効性の検証としては,授業を行った教員の評価(ヒアリング調査),授業を受けた学習者の評価(アンケート調査),ワークシートを見た保護者の評価,から行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1については,桜島での気象研究所のXバンドMPレーダーや鹿児島大学のKu-bandレーダーの観測により,これまで得られていなかった降水時や曇天時の噴火のデータが蓄積された.更に,船舶レーダーの噴火観測の有効性について検証できた点は新たな観測技術の提案として評価できる. 課題2では上記の観測データを解析して,降水時および曇天時の噴煙柱の・噴煙の実態が明らかにされつつある.XバンドMPレーダーデータの解析を通じて,噴煙のレーダーパラメータの統計的性質や降雨と降灰の判別に必要なメンバーシップファンクションなどが得られており,今後の定量的な解析を行うための有効なツールが計画通り開発されている. 課題3については,H30年度に計画をしていた調査を計画通り実行できた.開発した教材ならびに授業の有効性の検証を行った結果,教員,生徒,保護者から良い評価が得られた.また,課題1.噴煙柱・火山灰雲の観測研究,課題2.噴煙柱・火山灰雲の構造に関する解析研究で得られた結果を,教育現場で活用することができた.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度であるため,3つの課題のそれぞれのとりまとめをおこなう.具合体には,課題1では,降雨時の噴火現象の観測に気象レーダーが有効であることについて整理する.特に,噴煙の微物理過程の研究における偏波レーダーパラメータの活用に焦点をあてる.また,新たな観測技術としての船舶レーダーによる降水時の噴火の自動検出手法についてまとめる.課題2では,開発した粒子判別ツールや噴火自動検出アルゴリズムを,課題1で得られた観測データに適用して,降水時の噴煙柱・噴煙の微物理概念モデルおよび運動学的概念モデルの構築を試みる.課題3については,H30年度の結果を踏まえ,開発した火山噴火に関する防災教育の授業ならびに教材の更なる充実を図る.具体的には,有効性の実証の回数を増やし,1)得られた課題の修正,2)教材の充実,3)開発した授業ならびに教材の普及に向けた検討を行う.上記の3つの課題の研究成果を報告書にまとめるとともに,公開シンポジウムを東京あるいはつくばで開催する.
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