研究課題/領域番号 |
16H03147
|
研究機関 | 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 |
研究代表者 |
井上 徹教 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, グループ長 (70311850)
|
研究分担者 |
小栗 一将 国立研究開発法人海洋研究開発機構, その他, 研究員 (10359177)
松崎 義孝 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 主任研究官 (10536684)
高川 智博 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 津波環境研究グループ長心得兼務 (30451785)
鈴木 高二朗 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, グループ長 (50360764)
千田 優 国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所, 港湾空港技術研究所, 研究官 (70774214)
菅 寿美 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 生物地球化学研究分野, 技術副主任 (80392942)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 津波 / 救命胴衣 / 漂流リアルタイム予測 |
研究実績の概要 |
大規模津波では被災者のみならず、多くの漂流物がともに流される。救命胴衣等により水面での浮上が確保された場合も、それらの漂流物との接触により負傷するリスクが示唆されている。しかし、これらの情報は陸上で建物の倒壊などで損傷した遺体が津波で流されたり、海岸の瓦礫を整理する際に遺体を損傷してしまった可能性も否定できない。そこで2年目にはダミー人形への加速度計の設置を行い、各実験条件に対する津波に巻き込まれた際の加速度や、コンクリート構造物等に衝突した際の衝撃力等を算定した。 実験には、水難救助訓練での使用を目的としたダミー人形を用いた。ダミー人形は実験毎に水で浸し、比重が人体とほぼ同様の約1.05になるように調整した。また、ダミー人形の頭部および足部には、実験中の移動を把握するためにLEDライトを装着し、津波に巻き込まれた場合の加速度や衝撃力を算定するための加速度計も設置した。 まず、大型津波実験水槽内に設置された大型構造物などのまわりで巻き込むような実スケールに近い流れの中で、救命胴衣の着用により水面上に浮上することが可能か実験的に検証した。その結果、巻き込まれるような下向きの流れの中においても、救命胴衣が被災者の浮上に有効に働くことを確認した。また、救命胴衣非着用時には路面等の凹凸による衝撃を受けるのに対し、救命胴衣着用時には水面に浮上することにより、それらの衝撃を受けないことが示された。さらに、コンクリート構造物等への衝突時の衝撃力についても算定し、衝撃そのものが死亡要因となる可能性は少ないことが示唆された。 これらの結果から、津波特有流れへに対しても市販の救命胴衣の着用により安全性が向上することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
港湾空港技術研究所が所有する疑似的な津波を発生させることが可能な大型実験施設を用い、市販されている救命胴衣を使用して、津波に特徴的な巻き込みがある流れの中での救命胴衣の有用性を検討した。実験には、水難救助訓練での使用を目的としたダミー人形を用いた。ダミー人形は実験毎に水で浸し、比重が人体とほぼ同様の約1.05になるように調整した。また、ダミー人形の頭部および足部には、実験中の移動を把握するためにLEDライトを装着し、津波に巻き込まれた場合の加速度や衝撃力を算定するための加速度計も設置した。 実験は、津波の来襲を受けた直後の人体の動きを想定して、以下の手順で行った。まず、上述のダミー人形を水路床部に設置した1 m立方の方形コンクリートブロックの上に、波向きに対して垂直になるように寝かした状態で設置した。静水時の水位は、上記の方形コンクリートブロック上端より約20 cm高い位置にあった。このコンクリートブロックの位置での最大水位上昇が約60 cmとなるように造波板を制御し、水塊の移動に伴うダミー人形の輸送の様子をビデオカメラで撮影し、解析を行った。救命胴衣を着用したダミー人形の頭部は、上記の波により生じた渦に巻き込まれることなく常に水面上に位置した状態であったのに対し、救命胴衣未着用のダミー人形の頭部は渦に巻き込まれ水中に没したままであった。また、コンクリート構造物等への衝突時の衝撃力についても算定し、衝撃そのものが死亡要因となる可能性は少ないことが示唆された。 また、津波被災時の漂流シミュレーションモデルを構築した。計算手順は、想定される津波シミュレーション例を予め蓄積しておき、それらを入力条件として以降の漂流計算を行うものとした。
|
今後の研究の推進方策 |
3年目では被災者が救命胴衣着用状態で海上等へ流され漂流している状態を想定し、漂流者の探索に資するシステムの開発を行う。汎用的なシステム構築を目指し、普及率の高いスマートフォン等を用いたシステムを検討する。また、スマートフォン等の使用を想定する上では防水対策も重要となることから、スマートフォン用防水ボックスを3Dプリンターで試作し、救命胴衣への取り付けを検討する。また2年目までに得られた成果を論文発表等で対外的に公表することも目指す。
|