研究課題/領域番号 |
16H03148
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研究機関 | 山梨県富士山科学研究所 |
研究代表者 |
藤井 敏嗣 山梨県富士山科学研究所, その他部局等, 所長 (00092320)
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研究分担者 |
吉本 充宏 山梨県富士山科学研究所, その他部局等, 研究員 (20334287)
石峯 康浩 国立保健医療科学院, その他部局等, 上席主任研究官 (40450259)
山田 浩之 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, システム工学群, 准教授 (80582907)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 火山噴火 / 噴石 / 山小屋 / シェルター / 衝突実験 |
研究実績の概要 |
山小屋の屋根構造の落石や噴石などの岩石の衝突に対する強度を明らかにするために、富士山における山小屋の構造調査、富士山の山小屋で使用されている杉の野地板を用いた屋根構造に噴石を模した飛翔体を衝突させる実験を実施した。また、山小屋構成材料の強度特性評価のため構造用木材としてよく使われるスギ材とヒノキ材について,準静的及び衝撃速度における圧縮試験やせん断試験を実施し、スギ材に比べヒノキ材が強度特性に優れているこが示された。さらに、縦型空気圧式衝突試験装置の開発を実施した。なお,当初無隔膜ガス圧式装置の開発予定であったが,設置方法等の観点からから空気圧式に変更した。 衝突実験は、防衛大学校所有の圧縮空気によって飛翔体を噴射させる高速投射型衝撃破壊試験装置を使用した。実験では、飛翔体に火山岩の標準的な密度に近い値を持つビトリファイド砥石(2421 ㎏/m3 ) を用い、直径90mm、質量2.66kgのものを使用した。飛翔体の速度は10m/s~100m/sの範囲で行った。屋根構造に関しては、富士山における山小屋の構造調査を実施し、その調査に基づいて富士山の山小屋で標準的な仕様とされているものを参考に作成した。杉板の厚さ15mm、幅150mmのものを45mm×90mmの垂木で固定し、600mm四方とした。屋根構造と同様にするため、表面には防水シート(厚さ約1mm)、ガルバリウム鋼板(厚さ約0.4mm)を釘で固定した。衝突実験における飛翔体の速度と貫通の有無を調査した結果、30m/sでは貫通することなく、34.2m/sでは貫通した飛翔体は試験体のすぐ後ろに落下していた。このことは衝突エネルギー1200~1500J 付近が貫通と不貫通の境界となることを示している。この結果から、厚さ15mmの杉板を使用した屋根の場合、こぶし大ぐらいの岩石が時速100kmで衝突しても貫通しない結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、山小屋の屋根構造の落石や噴石などの岩石の衝突に対する強度を明らかにするために、富士山における山小屋の構造調査、富士山の山小屋で使用されている杉の野地板を用いた屋根構造に噴石を模した飛翔体を衝突させる実験を実施した。また、山小屋構成材料の強度特性評価のため構造用木材としてよく使われるスギ材とヒノキ材について,準静的及び衝撃速度における圧縮試験やせん断試験を実施し、スギ材に比べヒノキ材が強度特性に優れているこが示された。さらに、縦型空気圧式衝突試験装置の開発を実施した。なお,当初無隔膜ガス圧式装置の開発予定であったが,設置方法等の観点からから空気圧式に変更した。衝突実験では厚さ15mmの杉板を使用した屋根の場合、こぶし大ぐらいの岩石が時速100kmで衝突しても貫通しない結果が得られている。 一方、有限要素解析による衝突実験の簡易的な再現を実施する予定であったが、手法の検討にとどまっている。総合するとおおむね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画としては、前年度に実施した噴石による木造建造物に対する被害実態の調査および横型衝突試験装置を用いて衝突実験を継続する。衝突実験では,飛翔体重量や試験体の素材厚さを変えて実施する。さらに噴石は火山の種類により密度,構造が異なるため,種類の異なる飛翔体に対しての検討を行う。その結果をもとに、噴石重量と衝突速度の相関を明らかにし,噴石のエネルギーを推定し,噴石の飛行挙動を明らかにする。 引き続き、噴石の強度特性や山小屋構成材料の強度特性を明らかにするためにスプリット・ホプキンソン棒型試験装置を用いて高ひずみ速度変形時の応力-ひずみ関係を取得し,衝撃変形特性に優れた山小屋に適した材料を明らかにする。 保護部材を用いた山小屋シェルター化に関する検証実験として,アラミド繊維織布,セラミック繊維,ハニカム構造体の耐衝撃性能を明らかにする。また、前年度開発に着手した縦型空気圧式衝突試験装置を完成させ、敷砂のような流動物質を緩衝材として使用した衝突実験を実施する 実験より得られた木材の強度特性から,保護部材を用いない山小屋の補強方法として屋根構造の複合化等の噴石衝突による損傷を軽減する効率の良い山小屋の組み立て方を検討する 上記で行ってきた山小屋を模擬した試験体を数パターンモデル化し,有限要素解析による衝突実験の簡易的な再現を実施する。実験と解析の合わせこみにより,簡易的に解析の有用性を評価する。その際,上記で求めた噴石および木材の材料構成式を利用して,解析精度を高めるようにする。これらを基に耐噴石強度を有する建築基準の検討を実施する。 上記で得られた結果について取りまとめ順次、学会等で発表を行う。
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