研究実績の概要 |
2015年ネパールゴルカ地震で崩壊集中したゴルカ(面積801km2 崩壊数1419)・トリスリ川上流(460km2 543)・ボテコシ川(657km2 1513)地域でASTER G-DEM(30m)とAW3D-DEM(5m)による地形条件の解析を行った。ここでは地震による崩壊地と各調査地域での起伏量・傾斜・地上開度を比較した。200m四角の範囲での起伏量では, 調査域の平均起伏量152mより大きい斜面で崩壊が多かった。5mメッシュによる傾斜では調査域平均32-34°よりも大きい40°~50°での崩壊が多かった。 起伏量・地上開度・傾斜を取り上げ, ゴルカ地区でのバッファ移動分析による崩壊発生・非発生データから各要因内のランク別のウエイトを設定した。さらに, 地形量計算範囲の大きさを変えて過誤確率が小さくなるように, 地上開度は計算距離4000m, 起伏量は200mとした。次に, 過誤確率が小さい要因ほどウエイトが大きくなるように検討し, 傾斜:地開度:起伏量=42:25:33の要因評点とした。この評価モデルを本震に加えM6.5以上の余震が2回あったボテコシ川に適用したところ, 危険度評価点数が大きいほど崩壊発生率が大きい結果となった。トリスリ川上流で同様の方法で作成した評価モデルでは,起伏量の計算領域8000mで流域傾斜:地上開度:起伏量=36:26:38となり, 崩壊の集中した谷中谷を拾える大きな範囲の起伏量が評価に最適となったが, 概ねゴルカモデルと各要因間のウエイト比に大きな差はない。 以上から, 降雨の影響を受けず地震動に起因してヒマラヤの硬質岩帯で起こったゴルカ地震での斜面崩壊では, 地形的に傾斜・起伏量・地上開度を要因とする発生危険斜面評価が提案でき, その構築に, GISを用いた崩壊・非崩壊バッファデータの分析と過誤確率でそれらの分離を高める手法が考えられた。
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