研究課題/領域番号 |
16H03154
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
笹原 克夫 高知大学, 教育研究部自然科学系農学部門, 教授 (90391622)
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研究分担者 |
小泉 圭吾 大阪大学, 工学研究科, 助教 (10362667)
小山 倫史 関西大学, 社会安全学部, 准教授 (20467450)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自然災害 / 地盤災害 / 斜面崩壊 / 計測 / 予測 |
研究実績の概要 |
平成29年度は幅30cmの小型の土槽を用いて模型斜面を作製し,一定強度の散水を与えて崩壊させる実験を実施した。幅が小さい模型は側壁の摩擦の影響が大きく,予備実験を繰り返し,崩壊が発生する模型斜面の条件を作り出した。その上で小型模型斜面の地下水位と変位のデータを計測した。 まさ土よりなる実大規模の模型斜面に人工降雨を与えて崩壊させた実験における変位計測データを用いて,崩壊の検知に必要な変位の計測精度と計測時間間隔について検討した。変位計測精度を崩壊までの変位で、ないしは計測時間間隔を崩壊までの時間で無次元すると,誤差との間に一対一の相関関係が見られた。これより必要な変位計測精度と計測時間間隔を推定できる。 昨年度に引き続き、模型斜面を使った散水実験により,斜面内の体積含水率の変化と地表面変位の関係について評価を行った。昨年度の成果より,斜面変形の兆候をより早く検出するためにはのり尻付近にセンサを集中させることが有効であることが分かった。そこで今年度は模型斜面の形状を一部改良し,のり尻の深度方向に複数のセンサを設置して実験を行った。その結果, 斜面変形の兆候を従来よりも早く検出できることが確認された。 本年度は,斜面崩壊発生の事前予測の高精度化に向けて現場での計測・モニタリングデータの取得を継続して実施した。取得した計測データはデータ同化手法の1つであるアンサンブルカルマンフィルタにより解析モデル(タンクモデル)とのマッチングを図った。その結果、降雨に伴う斜面内の水分量、地下水の挙動をおおむね表現できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
試験地及び様々な規模の模型斜面における降雨浸透とそれに伴う斜面変形の計測は,順調に実施され,計測データを用いた様々な検討が行われている。特に後者の模型実験については様々な規模の模型斜面を作製し,散水下の降雨浸透と斜面変形のデータを取得している。これに基づき,「地下水位と地表面変位」ないしは「間隙水圧とせん断ひずみ」の関係に基づく崩壊発生時刻の予測手法を検討し,提案している。ただし一定せん断応力下での単純せん断試験については,試験装置は作成したが,せん断箱への給水速度が模型斜面の実験で実測した値と大きく異なり,給水方法の検討に時間がかかっている。そのためデータが取れていない。
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今後の研究の推進方策 |
小規模及び中規模の模型斜面を用いて,散水下における斜面変形の計測を,さらに多くの条件の下で実施し,「地下水位と地表面変位」および「間隙水圧とせん断ひずみ」の関係を検討すると共に,それらに基づく崩壊発生予測手法について検討する。また一定せん断応力下での単純せん断も実施し,これを非常に小さな規模の模型斜面とみなして解析を行うつもりである。 これまでの研究成果により,斜面変形は,体積含水率が擬似飽和体積含水率を超えなければ発生しないということを明らかにした。一方,申請者らが定義した擬似飽和体積含水率はあくまで不飽和状態下の現象を捉える指標であり,この指標のみで間隙水圧の上昇から変形発生までを解釈することは難しい。そこで今年度は斜面変形の引き金となる間隙水圧の変化を捉えることで,擬似飽和から飽和,変形発生までの浸透と変形の関係性を把握するための実験を行う予定である。 今後,斜面での過去の斜面内水分量・地下水位の計測データ(時系列データ)をもとに機械学習を活用した異常値検知を試みる。
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