研究課題/領域番号 |
16H03158
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
近藤 英司 北海道大学, 医学研究院, 特任教授 (60374724)
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研究分担者 |
安田 和則 北海道大学, 医学研究院, 名誉教授 (20166507)
近江谷 克裕 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究部門長 (20223951)
小野寺 純 北海道大学, 大学病院, 医員 (90374511)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腱・靱帯 / 移植 / 力学的特性 |
研究実績の概要 |
成羊前十字靱帯再建モデルにおいて幹細胞様細胞を被損傷靱帯から関節内移植腱へ遊走させた群(被覆群)と、その処置を行わなかった群を作製した(非被覆群)。移植腱は、半腱様筋腱を採取し、Endobutton-CLとポリエステルテープを直列結合した無細胞マトリクスを作製した。次に専用ガイドを用いて大腿骨および脛骨の前十字靱帯付着部に6 mmの骨孔を作製した。被覆群では、腱マトリクスを被損傷靱帯組織の中を通して移植し、膝屈曲60度の肢位にて初期張力40Nを与え、screw固定した。術後、膝固定は行わず牧場で放牧した。各群とも術後4週および12週に屠殺して生体力学的、組織学的、および免疫組織学的評価に供した。術後、両群とも各観察時期において軟骨変性や半月板損傷はなかった。非被覆群の移植腱は薄い滑膜様組織で被覆され、脛骨側付着部は正常靱帯に比べて断面積が小さかった。一方、被覆群の移植腱は肥厚した線維性滑膜組織で被覆されており、脛骨側付着部は正常靱帯に近似していた。断面積は被覆群が非被覆群より有意に大きかった。脛骨前後移動距離は被覆群が有意に低値であった。初期剛性は、被覆群が高値であったが、終末剛性に関しては差がなかった。被覆群では、術後4週で被損傷靱帯の不規則な線維配列が観察されたが、術後12週では被損傷靱帯と移植腱の接着が観察され、正常に近いEnthesis構造であった。術後4週における被覆群の細胞数および血管数は、非被覆群に比べて有意に高値であったが、術後12週では差がなかった。術後12週における被覆群の固有知覚受容器は非被覆群に比べて有意に高値であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成29年は以下の予定であった。 前十字靱帯再建(羊)モデルにおいて、幹細胞様細胞を被損傷靱帯から関節内移植腱へ遊走させた群と、その処置を行わなかった群を作製後、移植腱から細胞を分離し、両群の対比において前者に特異的に高発現している遺伝子を、マイクロアレイを用いて網羅的に解析する。そこで明らかになった主要な機能分子および幹細胞マーカーの発現について、遺伝子およびタンパクレベルで明らかにすることにより、この細胞の遊走後の機能の変化を継時的に明らかにする。 しかし、成羊(サフォーク種)の入手が不足であったこと、成羊モデルの作製に時間を要したこと、および遺伝子解析に困難を生じたため研究に若干の遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
成羊前十字靱帯再建モデルを用いて幹細胞様細胞を被損傷靱帯から関節内移植腱へ遊走させた群と、その処置を行わなかった群を作製する。その後1、4、および12週の各時期において各群の移植腱から細胞を分離し、両群の対比において前者に特異的に高発現している遺伝子を、マイクロアレイを用いて網羅的に解析する。そこで明らかになった主要な機能分子および幹細胞マーカーの発現について、RT-PCR、Western blot、および免疫染色を行う。遊走群における移植腱における力学的特性の改善およびメカノ受容器の再生の促進を定量的に計測する。以上の結果から被損傷靱帯から遊走した幹細胞様細胞が移植腱の再構築過程および神経再生を促進する現象の分子機序を明らかにする。
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