研究課題/領域番号 |
16H03160
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉澤 晋 東北大学, 工学研究科, 准教授 (30455802)
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研究分担者 |
梅村 晋一郎 東北大学, 医工学研究科, 学術研究員 (20402787)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 集束超音波 / 結石破砕 / キャビテーション |
研究実績の概要 |
1. 開発したトランスデューサの評価 前年度に開発したトランスデューサの評価を行った.開発したトランスデューサは,0.5 MHz付近と1 MHz付近の2周波数で共振するように設計した.測定の結果,128素子平均での共振周波数は0.48 MHzと0.93 MHzとなった.また,0.48 MHzおよび0.50 MHzにおけるコンダクタンスはそれぞれ2.0 mSおよび1.7 mSとなった.従って,音響エネルギー変換効率が70%程度であるとすると,400 Vpp駆動で3~4 kW程度の音響出力が可能である.音響出力としては,先行研究である0.17 MHzのBurst wave lithotripsy(BWL)を上回ると考えられる. 2. 様々な超音波照射方法による結石破砕実験 さらなる結石破砕の高速化を目指し,まずは周波数1 MHzの強力な超音波を照射し,モデル結石の破砕実験を行った.モデル結石の材料としては,従来のセメントから歯科用石膏に変更した.石膏はモデル結石破砕実験でセメントよりも一般的に用いられる材料であり,セメントに比べて均質性の高いモデル結石ができる.作成したモデル結石のビッカース硬さを測定したところ,平均値が102 HV,標準偏差が14 HVであった.ばらつきはセメントで作成したときよりも改善しており,値は同程度で硬い結石のビッカース硬さと同程度であった.このモデル結石に対して,結石サイズと同等程度の円環状の焦点パターンを持つ超音波を照射し,破砕実験を行った.しかしながら,破砕効率(破砕速度を入力音響エネルギーで割ったもの)は向上しなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書における計画のうち,1項目の「開発したトランスデューサの評価」については,電気特性と共振周波数を評価し,現在保有している超音波駆動システムによる最大音響出力について見積もった.最大音響出力時の実際の焦点圧力波形を取得することなどはまだできていないが,キャビテーション気泡の生成について実験的に確認することができている.2項目の「様々な超音波照射方法による結石破砕実験」については,モデル結石の材料を見直し,結石サイズと同等の円環状の焦点パターンによる破砕実験を行うことができた.1 MHzでの実験のみではあるものの,モデル結石のばらつきが小さくなったため,実験結果のばらつきの低減が見込めるようになり,また破砕効率の向上はなされなかったものの,結石側面の破砕が起こるなど,これまでの実験では観測されなかった事象も観測されている.さらに,残存キャビテーション気泡の挙動が非常に重要であることがわかってきたため,高ピクセル数を有す高速度カメラによる高速度撮影の準備も進めた.以上より,全体としてはおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
トランスデューサの低い方の共振周波数である0.5 MHzにおいても,先行研究のBWLよりも周波数が3倍程度高いため,結石のスケールに対する焦点領域のスケールが大きく異なる.そこで,本年度試行したような円環状の焦点パターンを作るなど,ビームフォーミング技術によってこれを改善する.一方で,周波数が高いということは破砕片を小さくできるという長所があるため,0.5 MHzで効率のよい破砕を行える技術は有用性が高いと考えられる.また,破砕効率および破砕速度を向上させるためには,前の超音波パルスで生じたキャビテーション気泡の残存状態が大きく影響することがわかっている.そこで,本年度購入した高ピクセル数を有す高速度カメラを用いて残存気泡の高速度撮影を行う.さらに,超音波撮像も行い,気泡の光学的な可視化が困難な生体中においても残存気泡の状態をモニタリングし,フィードバックすることで適切な超音波パルス繰り返し周波数を選択できるような手法を開発する.これによって,生体中においても高速,高効率な結石破砕法の実現を目指す.
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