今後の研究の推進方策 |
ketamineの抗うつ作用と副作用を神経回路電気活動として可視化,メカニズム解明と新規薬理活性物質の探索を目指す立場から,以下の2つの課題を設定して実験を遂行,得られた結果を統合して研究成果の取りまとめを行なう. 1. 薬物投与に対する急性・慢性応答の観測 特定の薬物濃度でketamineによる大脳皮質の活動抑制のみが顕著に発現し,memantine投与に対する活動変化は大脳皮質,海馬とも認められないという現象が観測されたことに基づき,この条件下でのketamine投与に対する大脳皮質,海馬の活動につき長期計測を実施する.ketamineの抗うつ作用は,静注の場合投与後2時間程度で発現して1-2週間継続,解離性などの副作用は投与後すぐに現われて抗うつ作用発現前に消失するとされる(Dutta et al., Psychiat. Res., 2015).培養神経細胞群に直接投与する場合,効果発現までの時間遅れはさらに短いと考えられ,投与直後から2時間の神経活動を詳細に解析することにより,副作用に対応する信号パターンの抽出が可能と考えられる.さらに薬物投与後1週間までの自発活動変化を経時的に観測することにより,抗うつ作用に対応する信号パターン検出を目指す. 2. 新規薬理活性物質の探索 抗うつ作用に対応する神経活動を最も早期に発現して最も長期間継続,かつ副作用が少ない薬理活性物質の探索を行なう.NMDA受容体に対するアンタゴニスト作用を有する物質として,グリシン結合部位に作用するGLYX-13, 7-CTKA,GluN2Bサブユニットに選択性を有するCP-101,606, MK-0657(Pochwat et al. Expert Opin. Inv. Drug., 2014)等を候補として,急性・慢性の神経活動記録を実施する.
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