研究課題/領域番号 |
16H03165
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
兵頭 政春 金沢大学, 機械工学系, 教授 (30359088)
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研究分担者 |
的場 修 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (20282593)
宮内 哲 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター企画室, 嘱託 (80190734)
齋藤 伸吾 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所フロンティア創造総合研究室, 主任研究員 (80272532)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 生体情報・計測 / 医用光学 / 生体活動計測 / 角度分解計測 |
研究実績の概要 |
前年度までに開発した多層構造を備えたシミュレーションプログラムをさらに改良し,検出器直下の生体深部に吸収体が局在するモデルに拡張した.このモデルを用いたシミュレーションにより,角度分解計測法によって生体深部における吸収係数変化の識別が十分に可能であることを実証した.一方,シミュレーションプログラムのGPUへの実装についてはメモリアロケーションの競合を完全に解消するには至らず,完全な実装にはさらに時間を要する見込みとなった.このため,シミュレーションの精度を損なうことなく計算に要する時間を大幅に短縮することをめざし,モンテカルロシミュレーションと拡散方程式の解析解を組み合わせる新たなシミュレーション法の開発に着手し,以下の成果を得た: (1)通常のモノポール検出器の空間感度分布関数が拡散方程式の解析解の積によって得られることを示した. (2)角度分解計測用プローブの感度分布が通常のモノポール検出器と仮想的なダイポール検出器の重ね合わせで近似できることを示した. (3)重ね合わせた解析解をシミュレーション結果にフィッティングさせることにより,角度分解計測用プローブに対する厳密な数値シミュレーションの結果を高い精度で再現できることを示した. フィッティングパラメータが決定できれば,数値シミュレーションを行わなくても解析解だけを用いてプローブ配置の条件等を変更した結果をたかだか数分間程度で予測することが可能となる見込みである.さらに,前年度に引き続き,散乱光強度の角度分布が計測可能な光プローブの設計を実施した.3レンズ系の設計において像面湾曲を補償するためにペッツバール和を零とする拘束条件を追加することによって集光性能が向上することを確認するとともに,残留するコマ収差によって最終性能が制限されてしまうことを確認し,ペッツバール和とアッベの正弦条件を両立させる設計法の開発に着手した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多層構造散乱吸収モデルを用いたモンテカルロ型のシミュレーションプログラムの開発が予定通りに進んでおり,生体深部に吸収体が局在化する場合の頭皮血流と脳血流の識別可能性に関する研究において着実に成果が得られている.シミュレーションプログラムのGPUへの実装については進捗が遅れているものの,モンテカルロシミュレーションと拡散方程式の解析解を組み合わせる新たなシミュレーション法の着想を得るなど,想定以上の成果も上がっている.また,光プローブの開発に向けた研究も順調に進展している.以上の理由から,本研究課題は総合的に見て概ね順調に進展していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の最終年度は、主に以下の研究課題を実施する(行頭文字は申請書に記載した項目文字.カッコ内は主たる担当者). (エ) 吸収体が存在するモデルへシミュレーションプログラムを拡張するにあたり,拡散方程式の解析解を利用して空間感度分布を推定する新たなシミュレーション技術を開発する.さらに,角度分解計測検出器を等価なダイポール検出器で置換することにより,計算精度を保ったまま計算時間を大幅に短縮可能なシミュレーション技術を開発する.これらの技術をモンテカルロ法の利用が困難なさまざまな計測条件に適用することにより,角度分解計測の効果と適用限界を明らかにする.(兵頭・的場) (オ)吸収体部位の計測精度の向上を図るため,必要最小限のプローブ数で吸収部位を特定するための独自のスキーム開発を継続する.具体的には,(エ)で開発されるシミュレーション技術を用い,1つの検出器による角度分解計測で吸収の変化を識別できない領域を特定し,その領域が重ならないように第2のプローブ位置を決定する.領域の重なりが完全になくなるまでこの操作を繰り返すことにより,必要最小限のプローブ数とその配置を決定する.(兵頭・宮内) (カ)計測スキームの有効性を定量的かつあいまいさなく実証するため,前年度に引き続き,散乱光強度の角度分布が計測可能な光プローブの設計開発を継続する.特に,多レンズ構成において,コマ収差や像面湾曲などの各種収差の影響を詳細に検討し,収差の影響を最小化する技術を開発する.これにより,従来にはない広視野・高検出効率のプローブ開発を目指す.(兵頭・齋藤・宮内)
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