研究課題/領域番号 |
16H03166
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
山口 昌樹 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (50272638)
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研究分担者 |
小泉 知展 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (20273097)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生物・生体工学 / マイクロ・ナノデバイス / モニタリング / がん / サイトカイン |
研究実績の概要 |
本研究は,300種以上が発見されているサイトカインと呼ばれる一群の情報伝達物質のコード情報と経時的な変化を測定し,早期のがん部位を可視化することを目的とした。本年度は,抗体修飾した抗原内包型の光開裂性マイクロ粒子の開発と,シグナル増幅法の基礎研究を行うために,下記の3課題に取り組んだ。 1. 光開裂性マイクロ粒子の作成 1) 骨格層,2) 脂質二重膜,3) 外殻層からなる直径2ミクロンほどのマイクロ粒子を試作した。外殻層に光触媒であるTiO2を用いることで光開裂性を付与し,メチレンブルーの分解スピードから光触媒活性を評価して光開裂性を実証し,所望の結果を得た。本年度は,進歩性・新規性の担保に注力し,光開裂性マイクロカプセルの特許出願を優先した。 2. シグナル増幅法の基本特性の測定 光開裂性マイクロ粒子の作成に手間取ったため,本取り組みはやや遅れている。抗体密度の最適化に関しては,抗体固定化効率を自己組織化単分子膜のプローブ分子のアルキル鎖長で調整できるところまでを実験的に示した。応答時間,シグナル増幅率については,検証を続けている。 3. サイトカインセンサの開発 アルカリフォスファターゼ標識抗サイトカイン抗体 (コンジュゲート) を有機合成して,競合法と発光基質を用いたイムノアッセイ-光検出系を設計・試作した。光電子増倍管を用いた検出機構も試作し,サイトカインセンサの性能評価を実施できる状況になった。一方で,被測定物質の同定にも着手し,ケースコントロールスタディの予備実験を開始した。その結果をもとに,肺がんリスク状態の評価方法,進行度合いの評価方法に関する特許出願を行った。 また,本年度の成果は,国内外の雑誌論文5編,学会発表5件,著書1編等で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時に計画した本年度実施すべき3つの課題のうち,光開裂性マイクロ粒子の作成を完了するとともに,特許出願した。残り2つの課題である「サイトカイン・コーディングに基づくがん部位に関する体内ネットワークのモデル化」と「サイトカイン・センサアレイによるがん部位の可視化」のうち,体内ネットワークのモデル化についても着手している。このように,本年度の課題についてはやや遅れている部分もあるが半ば以上を完了することで目標達成のめどをつけた。また,次年度の課題についても先行して着手している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の核となるのは,サイトカインセンサの開発と臨床研究 (ケースコントロールスタディ) である。2年度目は医工連携してケースコントロールスタディに本格的に取り組む。このような研究により,サイトカイン・コーディングに基づくがん部位に関する体内ネットワークのモデル化を図り,サイトカイン・センサアレイによるがん部位の可視化へと繋げる。
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