本研究は,300種以上が発見されているサイトカインと呼ばれる一群の情報伝達物質のコード情報と経時的な変化を測定し,早期のがん部位を可視化することを目的とした。本年度は,サイトカイン・センサアレイの製作,ケースコントロールスタディ,及び体内ネットワークモデルによるがん部位の可視化に取り組んだ。 1. サイトカイン・センサアレイの製作 光開裂性マイクロ粒子の開発を行い,シグナル増幅法の増幅特性を検証した。マイクロ粒子センサアレイの基本要素技術の構築により,同一検体から複数のサイトカインを同時分析するセンサアレイを実現するめどをつけた。 2. ケースコントロールスタディ 肺がんに続き,大腸がんに着目してケースコントロールスタディ (各群80名) を実施し,27項目のサイトカイン群を血液検体から同時分析した。サイトカインの分析には,初年度に購入した磁気ビーズ法を用いたマルチ分析システムを用いた。その結果,13種類のサイトカインで大腸がん患者と健常者に有意差が観察された (p < 0.05)。 3. 体内ネットワークモデルによるがん部位の可視化 大腸がんとサイトカイン群との関連性を検証するために,(1) Mann-Whitney検定,(2) ロジスティック回帰分析および (3) Receiver Operating Characteristic (ROC) 解析を行った。その結果,大腸がんにおいても部位特異的なサイトカインによるロジスティックモデルが構築された。 以上により,肺がんや大腸がんに特異的なサイトカインの組み合わせを発掘し,そのセンサアレイ開発のめどをつけるとともに,これらがんマーカーががんの存在とその進行度に応じて変化する可能性があることを示すことができた。 また,本年度の成果は,米国科学雑誌「PLOS ONE」など国内外の雑誌論文5編,学会発表5件,著書1編等で報告した。
|