研究課題/領域番号 |
16H03169
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岩坂 正和 広島大学, ナノデバイス・バイオ融合科学研究所, 教授 (90243922)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | マイクロミラー / グアニン結晶 / 光干渉 / 磁場 / 医療用デバイス |
研究実績の概要 |
H29年度の研究では、グアニン結晶板の磁気回転運動の過渡過程を観察するため、パルス磁場発生装置の仕様検討・開発・導入を磁石開発メーカとともに行った。その仕様検討では、2つのソレノイドコイルの空芯およびコイル間ギャップの磁場発生空間での、顕微観察および分光計測が可能であるような仕組みを開発した。2つの空芯コイルの中心部にて最大4テスラの磁場を10~25ミリ秒程度発生させ、グアニン結晶をはじめ、尿酸結晶他、さまざまな生体由来マイクロミラー材料の磁場印加過程における光反射挙動と光干渉パターン・モアレ縞の発生挙動の研究を進めた。観察方向を磁力線と平行にした場合、20ミリ秒間の4テスラ磁場印加による反磁性磁気回転がみられ、磁場オフ後の緩和過程が明瞭に観察された。また、新たにタンパク質繊維型のマイクロミラーとして、マイクロチューブルス(微小管)のアレイでの光干渉および構造色の発現に対するパルス磁場印加の効果も調べた。カブトクラゲの櫛板部分に並ぶ幅40ナノメートルの微小管アレイに暗視野照明光をあて、光干渉強度の変化をパルス磁場中での分光強度計測にて解析した。グアニン結晶板の場合と同様に磁場配向に伴う微小管アレイの回転運動に関連すると推察できる光強度変化が得られた。以上の進捗でもって、H29年度に開発導入したパルス磁場発生装置によるマイクロミラー回転制御試験を行いその性能確認を遂行した。 さらに、磁気力ピンセットによるグアニン結晶板の磁気マニピュレーション法開発に関し、その基礎手法開発を進めた。この磁気力ピンセットのプロトタイプとして、液相の磁化率差と磁場勾配の積に起因した磁気力によるグアニン結晶板マニピュレーションを試みた。魚類色素胞から抽出・精製したグアニン結晶板に対し、水中でヘモグロビンを付与した際の磁気回転・光干渉変化の基礎データの計測系を構築した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って、グアニン結晶板の磁気回転運動観察用パルス磁場発生装置の仕様検討・開発・導入を磁石開発メーカとともに行った。このパルス磁場装置では、グアニン結晶の他、数種類の生体由来マイクロミラー材料の磁場印加過程における光反射挙動と光干渉を調べ上で十分な性能であった。 グアニン結晶板の外部磁場への過渡応答解析では、期待したとおりの磁気応答が検出できた。すなわち、観察方向を磁力線と平行にした場合、20ミリ秒間の4テスラ磁場印加による反磁性磁気回転がみられた。尿酸結晶においても同様の成果が得られた。 さらに、マイクロチューブルス(微小管)のアレイでの光干渉において、開発したパルス磁場印加の効果が認められ、タンパク質である微小管アレイにおいて、光干渉強度の変化がパルス磁場中で制御する技術開発まで研究が急展開した。 以上より、H29年度に開発導入したパルス磁場発生装置では、マイクロミラー回転制御が十分に行えることが示された。 また、勾配磁場によるマイクロミラー制御技術として、液相の磁化率差と磁場勾配の積に起因した磁気力によるグアニン結晶板マニピュレーション手法のプロトタイプの開発に成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度では、グアニン結晶の光干渉型バイオセンシングの基礎手法をさらに発展させるため、天然グアニン結晶の安定性に関する検討を行う。魚類由来のグアニン結晶の表面にはベシクル等の生体分子が残存する可能性が高い。さまざまな有機溶媒における天然グアニン結晶の溶解特性,および水中でのグアニン結晶の分解速度を厳密に調べることで,流体回路内でグアニン結晶を長期間使用する場合の耐久性の情報を得る。得られた結果を人工結晶の耐久性向上に役立てる。 また、ターゲット分子の種類や大きさに応じた担持グアニン結晶の反磁性磁気回転速度を解析し,ナノ天秤としての性能を明らかにする。魚類ウロコから精製したグアニン結晶板の交差角を磁場配向で調整しつつ,光干渉を結晶板表面で制御する技術を確立する。この技術をもとに、モアレ干渉縞を利用したターゲット細胞・分子検出法の基礎原理を明確にする。 マイクロ・ナノスケールのモアレ干渉縞をグアニン結晶2枚の交差法で生成させ,ターゲット分子(DNA,タンパク質,脂質,核酸塩基等)近傍の屈折率情報を得る。また,グアニン結晶のモアレ干渉縞作成法と磁気制御手法を顕微観察システムに実装し,グアニン結晶板ペア(重ねた結晶板)の反射・透過光スペクトルをもとに,グアニン結晶界面に対するDNAあるいはシトシン,アデニンなどの核酸塩基,コラーゲン(タンパク質)、さらに培養細胞とディテクター用グアニン結晶板の分子間相互作用の検出に取り組む。
|