研究課題/領域番号 |
16H03174
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
名倉 武雄 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任准教授 (90306746)
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研究分担者 |
石井 賢 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (00276289)
陣崎 雅弘 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (80216259)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 共振周波数解析 / インプラント設置強度評価法 / 引き抜き力 / 埋入トルク / 脊椎外科 |
研究実績の概要 |
椎弓根スクリューの固定性評価指標には引き抜き力と埋入トルクが広く用いられる.両者はPS長軸方向の設置強度を反映するが,その他の軸方向の設置強度は反映していない.近年,歯科インプラント領域で共振周波数解析による非侵襲的設置強度評価が報告されているが,整形外科領域での報告は過去に無い.今年度は共振周波数解析による椎弓根スクリューの設置強度評価を実施した.密度の異なるモデルボーンおよび十分な椎弓根径を有する新鮮屍体8体に椎弓根スクリューを刺入し,引き抜き力および埋入トルク計測と共に共振周波数解析を施行した.モデルボーンは同じ検体刺入孔で複数回抜き刺しを行い,同一密度モデルボーンにおいての上記3固定力に対する緩みの影響を検討した. その結果、モデルボーンでの検討では引き抜き力および埋入トルク間で強い相関を示したが,興味深い事に共振周波数解析は,引き抜き力および埋入トルクと各々中等度の相関であった.椎体での検討でも固定力間比較では同様の傾向を示した.抜き刺しを繰り返す事でいずれの固定力も低下したが,共振周波数解析は高密度のモデルボーンにて複数回の抜き刺しを行っても低下は軽度であった.引き抜き力および埋入トルクは複数回の抜き刺しにて低下したが,椎弓根スクリューの長軸方向への固定性が,抜き刺しにて椎弓根スクリューの螺子山構造に噛み込む骨構造が破壊される結果失われる現象を反映していると考えられる.一方,共振周波数解析は引き抜き力や埋入トルクとある一定の相関関係は示すものの従来の長軸方向でない短軸方向への設置強度を捉えていると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回モデルボーンおよび屍体椎体での研究で、共振周波数解析の概要を解析し、かつ整形外科領域への応用に向けての基礎的データを取得する事が出来た。また、現在までに使用している機材で本来のゴールである各試験力を画像から予測する実験を施行する事が出来るため、次の研究に必要な機材は特になく、29年度に行う予定である、CT画像取得及び解析もスムーズに施行する事が出来る。また、共振周波数解析の整形外科への応用機材も現在順調に開発中であり、数年での実用化に向けてプロジェクトを進行出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに引き抜き力、埋入トルクおよび、新しいインプラント設置強度評価指標である共振周波数解析の3つの試験力の特徴を解析してきたが、これらの椎弓根スクリューの設置強度指標において,マイクロCT画像と固定力の関係に着目した研究は無い.今後の方向性として椎弓根スクリューの引き抜き力,埋入トルク,共振周波数解析の3つの固定力とマイクロCT画像より算出した骨密度および骨質の関連性を検討する予定である。 具体的には新鮮屍体椎体に椎弓根スクリューを刺入し,引き抜き力,埋入トルク, 共振周波数解析の3つの固定力を計測する.この際に、椎体をマイクロCTにて椎弓根スクリュー刺入前後で撮影し,骨梁構造計測ソフトを用いて椎弓根スクリューのスクリューヘッド基部~椎弓根腹側端までの距離および椎弓根の直径等、各椎弓根のおおまかな形態学的特徴の計測を行う.また三次元位置合わせ差分計測法により抽出した椎弓根スクリュー刺入海綿骨部位を椎弓根部,椎体背側半分,椎体腹側半分に分割し,各部位の骨形態計測パラメータと各固定力と比較する。これらの画像パラメーターがどのように引き抜き力,埋入トルク, 共振周波数解析に関係するか、及び組み合わせで予測できるかを解析する。以上のデータを元に、実臨床に置いて引き抜き力,埋入トルク, 共振周波数解析を算出できる画像解析ソフトウェアの開発を開始する。
また一方で共振周波数解析装置の開発も開始する。現在の手法は歯科で行われている磁石を使用する方法であるが、整形外科領域では、すでに設置してあるインプラントに磁石を付着させることが、インプラントが体内深部に位置しているため困難である。そのため現在非接触、非侵襲の共振周波数解析装置を今後開発する予定である。
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