研究課題/領域番号 |
16H03177
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
川下 将一 東北大学, 医工学研究科, 准教授 (70314234)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | チタン / 銀 / 銅 / 亜鉛 / アパタイト形成能 / 擬似体液 / イオン化傾向 |
研究実績の概要 |
チタン板を5 Mの水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液に60℃で24時間浸漬し、続いて0.1 Mの抗菌イオン(銀(Ag)、銅(Cu)あるいは亜鉛(Zn)イオン)含有水溶液80℃で48時間浸漬した。その後、同チタン板を600℃で1時間加熱処理し、得られた試料の表面構造、および擬似体液(SBF)中におけるアパタイト形成能を調べた。その結果、NaOH-AgあるいはCuイオン含有水溶液-加熱処理チタンはSBF浸漬7日以内にその表面にアパタイトを形成したが、NaOH-Znイオン含有水溶液-加熱処理チタンはアパタイトを形成しなかった。また、NaOH-Agイオン含有水溶液-加熱処理チタンにおいて、銀は主に銀コロイドとして存在し、その表面が酸化され、NaOH-Cuイオン含有水溶液-加熱処理チタンにおいて、銅は銅コロイドおよび/あるいは酸化銅(CuO)として存在していた。一方、NaOH-Znイオン含有水溶液-加熱処理チタンにおいて、亜鉛は主にチタン酸亜鉛(ZnTiO3)として存在していた。この各抗菌イオンの存在状態の違いは、それらのイオン化傾向の大小によって説明される。すなわち、イオン化傾向はZn > (> H) > Cu > Agの順になっており、ZnはCuやAgよりもイオンとして存在し、周囲のチタンや酸素と化合物を形成しやすい。その結果、NaOH-Znイオン含有水溶液-加熱処理チタンからは亜鉛が溶出し難く、アパタイト形成に有効なTi-OH基が形成され難かったと推察される。以上より、チタン表面にドープする金属の種類によって、その存在状態が異なり、SBF中における試料表面でのアパタイト形成には、抗菌イオンが主に金属コロイドとして存在していることが重要であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画書に記載したNaOH-抗菌イオン水溶液-加熱処理チタンの表面構造およびSBF中でのアパタイト形成能を明らかにすることができたことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、歯学研究科との共同研究により、NaOH-温水-アンモニア加熱処理チタンやNaOH-抗菌イオン含有水溶液-加熱処理チタンの抗菌性(可視光あり/なし)や、抗菌性発現機構をラジカル発生の観点から明らかにしたい。さらに、骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1細胞)用いて、試料の骨補填材料としてのポテンシャルを評価したい。
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