研究課題
本研究では、科学的に通常不可能な、生体内の水系の環境におけるDNAの陰イオンと一価の陽イオンとの結合体である「モノイオンコンプレックス(MIC)」の 学理を構築し、MICでしか実現し得ない微小空間への環状DNAの高密度な閉じ込めにより、環状DNAの飛躍的な拡散性に基づく生体個体内未踏空間への環状DNAの送 達システムを創製する。生体個体内の任意の全細胞での無侵襲的な、環状DNAの発現に基づくタンパク質医薬治療、RNA干渉、ゲノム編集の実現により、難治性疾患治療に対するDDS基盤技術の確立を目指す。本年度は、MICを形成する一価の陽イオンを有する生体適合性高分子の構造最適化の過程で合成したAPe-Im-E-PEG、すなわち、アミドペンチルイミダゾリウムとポリエチレングリコール(PEG)のスペーサーに生分解性のエステル結合を有するモノカチオン性PEGを用いた環状DNAの送達システムのためのMIC構造を最適化した。APe-Im-E-PEGの 経時的な加水分解過程を、ゲルろ過クロマトグラフィーにより評価し、生理pHでの約2週間の持続的な加水分解の促進が確認された。加水分解後のAPe-Im-E-PEGは、赤血球溶血実験により、生理pHと比較して、エンドソーム内pHでの細胞膜破壊活性を示した。さらに、これらモノカチオン性PEGとpDNAとのMICについて、透過型電子顕微鏡による詳細な観察の結果、混合電荷比16および32おいて、球状ではなく、凝縮が弱い傾向の形状を示した。得られたAPe-Im-E-PEGとpDNAとのMICをマウスの脛骨筋へ投与し、複数回の実験結果を統計的に処理すると、電荷比16の条件で、投与1週間から2週間にかけて遺伝子発現量が向上した。この時、蛍光組織切片観察からも、拡散的な発現が示唆された。以上の結果は、難治性疾患治療に対するDDS基盤技術の確立に寄与する。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Materials Chemistry B
巻: Accepted ページ: Accepted
Accepted
巻: 6 ページ: 7050-7059
10.1039/C8TB01204K
http://www.comp.tmu.ac.jp/asayama-lab/