研究課題/領域番号 |
16H03184
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
菊池 明彦 東京理科大学, 基礎工学部材料工学科, 教授 (40266820)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バイオマテリアル / 機能性微粒子 / 感温性 / ロッド / ガラス転移温度 |
研究実績の概要 |
本研究では、形状と表面物性が環境温度で変化し、細胞内取り込み制御を実現しうる感温性コアーコロナ型微粒子の調製を目的にした。特に、生理的温度近傍で物性が大きく変化する微粒子を調製するため、本年度は、コロナ高分子の転移温度の制御と、微粒子コアのガラス転移温度(Tg)の制御を目的に実験を行った。まず、微粒子のコロナを形成する感温性高分子の合成では、クロロメチルフタルイミドを開始剤に用いた原子移動ラジカル重合(ATRP)によりN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)とN,N-ジメチルアクリルアミド(DMAAm)との共重合を行い、転移温度を32-44℃の範囲で制御した。この高分子をマクロモノマーとしてブチルメタクリレート(BMA)との共重合を行い、微粒子を得た。本微粒子は生体温度近傍で分散・凝集変化が生起したことから、コロナ鎖の温度応答性を制御し表面物性を生体温度で変化しうる微粒子を得ることに成功した。次に、コアのTgを制御するために、プロピルメタクリレート(PMA)とメチルメタクリレート(MMA)とを感温性マクロモノマー存在下で重合を行い、コアTgの異なる微粒子を得た。コアを形成する高分子のTgは本年度予算で購入した示差走査熱量分析装置を用い測定を行い、共重合組成により35-60℃の範囲で制御できることを明らかにした。コアTgを50℃に有する微粒子含有フィルムを加熱しながら一軸延伸し、フィルム成分を溶解後ロッド状微粒子を得た。形状は走査型電子顕微鏡で確認した。ロッド状微粒子は、37℃の下で形状変化を起こさない一方、微粒子表面のコロナ高分子が脱水和し疎水性表面となるため凝集することを明らかにした。 以上の材料を組み合わせることで、温度変化で表面物性と形状を制御する微粒子設計の基礎的検討が達成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、生体温度近傍の前後で表面物性と微粒子コアのガラス転移温度を制御することで、表面物性と微粒子形状を生体温度近傍で制御しうる微粒子の調製と細胞への取り込み制御を明らかにするために研究を行っている。本年度は特に、微粒子表面に存在するコロナ鎖の転移温度制御と微粒子コアとなる高分子のガラス転移温度の制御を目指して研究を行った。コロナの転移温度の制御は、論文を参考にしながら共重合により制御可能であり、さらに末端官能基変換が比較的効率的に(80%の変換率)行えたことから転移温度を制御した感温性マクロモノマーの調製を行うことができた。加えて、微粒子コアを構成するモノマーをプロピルメタクリレートとしたことで、得られた高分子のガラス転移温度が比較的容易に生体温度近傍に制御しうることを明らかにすることができた。以上より研究は概ね順調に進展していると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
1.感温性コアーコロナ型微粒子の調製:今年度において明らかにした方法論に従い、生体温度の前後で微粒子表面、並びにコアの感温性を制御した微粒子を調製し、その温度変化に応答した形状変化挙動を明らかにしていく。特に、今年度に導入した示差走査熱量分析装置で室温よりも低い温度から熱量分析を行うために冷却ユニットを次年度に導入するので、これにより、調製した微粒子のガラス転移温度等をより厳密に明らかにしていく予定である。 2.ロッド状微粒子の調製と温度変化に応答した形状変化:1で調製した微粒子の分散液を低重合度のポリビニルアルコールと混合して成膜後、加熱下で一軸延伸してロッド状微粒子を得る。これら微粒子の温度変化に応答した形状変化挙動をヒーティングプレートを備えた顕微鏡下で観察を行うとともに、経時的に試料をSEM観察して形状変化挙動を明らかにしていく。特にコアのガラス転移温度と生体温度との差が形状変化に与える影響を明らかにしていく。 3.培養マクロファージへの微粒子の取り込み挙動:Mouse マクロファージの培養系に所定濃度の球状粒子、ロッド状粒子をそれぞれ加えて所定温度で培養を行い、経時的に細胞内への取り込みを確認する。培養温度と2で明らかにした温度変化に伴う微粒子の形状変化、並びに表面物性変化とから、微粒子の細胞内取り込みに与える表面物性と形状変化との関係を明確にする。 以上の研究を通じ、表面物性と形状とを温度で変化させうる微粒子のマクロファージ内への取り込みに与える、微粒子表面物性と形状の影響を明らかにしていく。
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