研究課題/領域番号 |
16H03186
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
山岡 哲二 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (50243126)
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研究分担者 |
徐 ユイ 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (10757678)
神戸 裕介 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 研究員 (30747671)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 再生医工学材料 |
研究実績の概要 |
ポリ乳酸からなる生体吸収性多孔質スキャホールドを用いた真皮組織等の軟組織再生を進めている。幹細胞等を用いない三次元組織のin vivo 再生は、人工骨や骨補填材などでの応用が進んでいるのみであり軟組織の再生の成績は良くない。多孔質コラーゲン製真皮欠損用グラフトにおいても肉芽様組織にとどまる。そこで、組織再生のための組織親和性ペプチドと、それをスキャホールドへ固定化するためのスキャホールド親和性を一分子中に保持したバイファンクショナル分子を開発し、ポリ乳酸系スキャホールドを修飾した。バイファンクショナル分子はFmoc固相合成法により合成し、生理活性ペプチド配列、タンデム配列、さらにコントロール配列を合成した。得られたバイファンクショナル分子とポリ乳酸と複合化し、特異的に作用する細胞を播種して培養したところその接着効率は低く、生理活性ペプチド配列がスキャホールド表面に露出する効率が低いことが判った。そこで、最表層に露出している機能性ペプチドのみを定量的に解析する手法を考案し、さらに、表面露出効率の高い分子の設計と最表面のペプチド分子露出効率を向上させる処理方法を見いだし特許申請をした。本年度には、これらの詳細解析を行い、表面に露出しているペプチド配列の密度と、特異的細胞接着効率が相関することを定量的に明らかにし、国内優先権主張出願を行った。これまでの、ESCA、IR、ADXなどの表面分析では、ある深さまでのペプチド配列の存在情報がとらえられてしまうが、細胞や組織は最表面のペプチド配列のみに反応する。今回の、評価システムおよびペプチド露出法は組織誘導型機能性スキャホールドの作製に有用であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度、機能性ペプチドの表面露出効率の高い分子を設計するとともに最表面のペプチド分子露出効率を向上させる処理方法を見いだし特許出願を行った(特願2016-176496 出願日:平成28年9月9日)。今年度は、露出ペプチド量と特異的細胞接着数が定量的に相関することが明らかとなったので、国内優先権主張出願を行ったことから、この点は計画以上の成果と評価している。一方で、動物実験の例数を増やすことが出来ず、総合的に、やや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
移植用サンプルの成形加工の手法としては、主に凍結乾燥法を選択する。ジオキサンとヘキサフルオロイソプロパノールをベースにした溶媒システムで定法により作製する。多孔質体の孔径はポリ乳酸濃度と用いる溶媒系によってコントロールする。ラットにおいては全層欠損モデルを考えいる。全層欠損への適応では体液の蒸発を効率良く防ぐ必要があるために、臨床で用いられているドレッシング材と同様に、体液の蒸発防止に加えて適度な酸素透過性を有するシリコン膜を採用する。 雄性ウィスターラット背部に1.5cm×1.5cmの全層欠損を作製し、二重構造人工真皮の移植実験を開始した。処置後、欠損の面積を測定、組織反応評価(HE染色:治癒の評価、カプセル化の厚みとヘマトキシリン染色濃度から評価)、CD68(マクロファージ染色:炎症・治癒の過程)、CD31・フォンビレブランド因子免疫染色(血管網構築)、エラスチカワンギーソン染色(スキャホールド中に再生したECM成分のコラーゲン及びエラスチンの染色)を実施する。さらに、ピンオンディスク押し込み試験により再生真皮の力学的強度を評価する。今年度、ヒト皮膚構造に近いとされているミニブタ皮膚移植を実施する。ラットと同様の是層欠損モデルでは、ケージに創部をこすりつけるなどして創部を長期間保持することが困難であったために、皮下埋入モデルを採用し、背部筋層へ移植して、6か月で開創して観察を続ける計画とする。
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