研究課題/領域番号 |
16H03190
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
喜多 英治 茨城工業高等専門学校, その他部局等, 校長 (80134203)
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研究分担者 |
小田 竜也 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20282353)
柳原 英人 筑波大学, 数理物質系, 教授 (50302386)
磯部 高範 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (50545928)
小野寺 礼尚 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 助教 (80758540)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | がん治療 / 医工学 / ハイパーサーミア / 磁性ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
この研究では強磁性ナノ粒子を用いたがん治療としてハイパーサーミア(温熱治療)の実現を目指して、発熱に必要な磁性材料や磁場印加装置の開発を進めている。今までマウスでのがん焼灼実験を行ってきたが、さらにスケールアップしてラット級の動物実験を可能とすることを目標にする。 まず、がん治療に十分な発熱を可能とする強磁性ナノ粒子の発熱の最適化を行っている。材料としてスピネル立方対称結晶の鉄酸化物を中心に開発を行っているが、生体適合性Fe窒化物についても高性能化を検討した。ナノ粒子の製法に関して、楕円板状ナノ粒子の形状制御と発熱を検討した。発熱の有効性を示すためにマウスに対する局部注射によるガン焼灼実験を行った。局部注射では10秒以内に設定温度の50℃に達し、その後、印加磁場を低減させて温度を5分間にわたって維持した。焼灼の効果は充分に現れた。結果について学会発表を行い、論文として公表を行った。 がん治療用のナノ粒子磁性流体としてブッロクポリマーを用いた表面修飾が優れいるが、試料調製が複雑であるため、それに替わる候補の検討を始めた。抗がん剤内包リポソームにコーティングした状態で、がん標的効果を調べている。 磁化過程と発熱の関係を調べて、発熱機構を明らかにするためダイナミック磁化計測を開発している。定量的な議論のために精度と再現性の向上を行った。60kHz~200Hzの周波数帯で信号検出方法を改良し、再現性を改善した。 ハイパーサーミア用磁場発生装置について、人体に対する磁場印加を目標に、マウスより大きな動物(たとえばラット)を対象に治療効果を試験できる装置の設計を行った。発熱体の特性から、周波数と磁場強度を100k~200kHz、600Oeで、磁場印加方法を検討し、印加マグネットを設計した。指針や設計の結果を学会発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この研究では、強磁性ナノ粒子を用いたがん温熱治療の実現を目指して、発熱に必要な磁性材料と磁場印加装置の開発を進めている。これまでマウスを用いたがん焼灼実験を行ってきたが、ラット級にスケールアップして動物実験を可能とすることを目標にする。 発熱体の開発として、がん治療に必要な発熱能力を有する強磁性ナノ粒子の最適化を行っている。スピネル型結晶の鉄酸化物ナノ粒子を中心に開発を行っているが、生体適合性に優れた鉄窒化物についても検討を開始した。鉄酸化物について、楕円板状ナノ粒子の製造条件を変化させてサイズと形状の制御を行い、それらの発熱への影響を調べた。試作した発熱体の発熱の有効性を示すために、マウスに対する局部注射によるがん焼灼実験を行った。がん部位の温度は磁場印加後10秒以内に設定温度の50℃に達し、その後、印加磁場を低減させて温度を5分間にわたって維持した。焼灼の効果は充分に得られる事がわかり、その結果は学会発表および論文として公表した。がん治療用の磁性流体には、ブッロクポリマーを用いた表面修飾が優れているが、試料調製に高度な技術が必要とされる。代替として抗がん剤内包リポソームにコーティングする手法を検討している。 磁化過程と発熱の関係を調べて材料開発に役立てるため、動的磁化計測法を開発している。発熱機構解明のために定量的な議論を進めるには、既存装置の精度と再現性の向上が必要であることがわかった。60kHz~200Hzの周波数帯で信号検出方法を改良して、再現性を改善した。 ハイパーサーミア用磁場発生装置について、人体に対する磁場印加を目標に、マウスより大きな動物(ラット)を対象に治療効果を試験できる装置の設計を行った。発熱体の特性を考慮して、周波数と磁場強度を100k~200kHz、600Oeに設定して磁場印加方法を検討し、磁場発生装置を設計した。その結果を学会発表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度においては、最終年度として総合的な研究を進める。これまでは生体実験としてマウスを利用してきたが、さらに大きな動物(ラット)でのがん治療効果を検証することを目標とする。昨年度、基本設計ができたラット級の磁場印加装置を実際に試作する。これは人体に対する拡張を想定しての設計がなされている。すでに部品等の選定や調達も進めている。装置を完成させた後、ラットに似せた模擬物体(ファントム)に対して、がん部位を想定して磁性流体を配置して昇温特性を観測する。引き続き、ラットを用いた実験を行う。 ナノ粒子の性能向上として、表面修飾に適した物質の探査を続ける。 高周波磁化測定装置の改良を続行しダイナミック磁化過程を精度良く測定し、発熱との関連性を定量的に議論できるようにする。ダイナミック磁化過程の測定は数秒で終了するので、発熱との関連性が明らかになれば、計測の時間短縮が可能になる。また発熱との同時計測ができるように工夫して比較を容易にしたい。
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