研究課題/領域番号 |
16H03194
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
荻野 千秋 神戸大学, 工学研究科, 教授 (00313693)
|
研究分担者 |
佐々木 良平 神戸大学, 医学部附属病院, 特命教授 (30346267)
西村 勇哉 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 特命助教 (40728218)
中山 雅央 神戸大学, 医学研究科, 医学研究員 (60582004)
沼子 千弥 千葉大学, 大学院理学研究科, 准教授 (80284280)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | バイオナノカプセル / 二酸化チタン / 放射線照射 / ナノ粒子 / 過酸化水素 |
研究実績の概要 |
本研究ではハイブリナノ粒子、バイオナノカプセル、放射線照射治療を融合させて、階層的に組み合わせることで、治癒が困難とされている膵臓がんへのアプローチを行う事を目的としている。本年度は、過酸化チタンナノ粒子からのラジカル発生機構や、ハイブリッドナノ粒子の体内挙動解析などを中心に実施してきた。以下に、実施した概要を報告する。 【項目A】放射線照射によるハイブリナノ粒子の応答性:ESRを用いて発生している活性酸素種について詳細な解析を実施し、結果的に活性酸素種の発生は、がん治療効果には大きな寄与が無いことを明らかにした。一方で、過酸化水素の発生がナノ粒子より明らかとなり、この分子種が、がん治療へと大きく関与していることを解明した。 【項目B】in vitroでの放射線照射とナノ粒子の併用によるメカノバイオロジー解析:過酸化チタンナノ粒子を多様な培養がん細胞群へと適用させ、ほぼすべての細胞腫において損傷効果があることを解明した。 【項目C】in vivoでの放射線照射とナノ粒子の併用による治療効果の最適化:過酸化チタンナノ粒子の体内挙動解析を実施し、がん組織にEPR効果によってナノ粒子が選択的に蓄積していることが明らかとなった。 【項目D】がん細胞標的化に向けたナノ粒子表面への抗体修飾技術の開発:過酸化チタンナノ粒子の表面へ抗体を修飾することに成功し、体内挙動へ適用させることで、選択的な標的化を達成できる見通しがついた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画は良好に達成できている。以下に、結果の一部として項目Cに関する詳細を報告する。
【項目C】過酸化チタンナノ粒子(PAATiOx)のマウス体内分布および安全性の調査 本研究では、ポリアクリル酸を修飾した過酸化チタンナノ粒子(PAATiOx)の体内分布及び急性毒性を健常マウスや担ガンしたマウスを用いて調査した。まず、PAATiOx, PAATiO2, H2O2を健常マウスの尾静脈から投与した。一定時間後、血液と臓器を採取して、血液検査により生化学パラメータを、(ICP-AES)により臓器に蓄積したTi4+イオンを定量した。最終的に、注入したPAA-TiOx NPsの約半分が肝臓に蓄積し、肝臓に関連するいくつかの生化学パラメータの値にわずかな変動が見られたが、これらの変動は肝臓の傷害を引き起こさなかった。続いて、PAATiOx, PAATiO2をMIAPaCa-2の担癌を行ったヌードマウスの尾静脈および腫瘍に直接投与し、臓器に蓄積したTi4+イオンを定量した。どの場合においても、注入したPAATiOx, PAATiO2の約半分が肝臓に蓄積した。加えて、局所注射および尾静脈注射のどちらの場合においても、PAATiOxのかなりの部分がEPR効果によって腫瘍を標的化していることも明らかになった。
|
今後の研究の推進方策 |
H29年度は、H28年度の研究成果に基づき、 【項目A】放射線照射によるハイブリナノ粒子の応答性:比表面積の大きなナノ粒子への改変 【項目B】in vitroでの放射線照射とナノ粒子の併用によるメカノバイオロジー解析:修飾ナノ粒子による細胞損傷効果 【項目C】in vivoでの放射線照射とナノ粒子の併用による治療効果の最適化:がん腫瘍の治療効果 【項目D】がん細胞標的化に向けたナノ粒子表面への抗体修飾技術の開発:過酸化チタンナノ粒子を包含するバイオナノカプセルの構築 に関して、継続して研究を推進する計画である。
|