研究課題/領域番号 |
16H03198
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
秋山 いわき 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (80192912)
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研究分担者 |
谷口 信行 自治医科大学, 医学部, 教授 (10245053)
石黒 保直 自治医科大学, 医学部, 非常勤講師 (10646326)
新田 尚隆 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (60392643)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 音響放射力 / 超音波造影剤 / 心電図 / 超音波ビーム / 焦点距離可変超音波照射 / 期外収縮 / リニアアレイ / Bモード画像 |
研究実績の概要 |
音響放射力インパルス(ARFI)を超音波造影剤投与後のウサギ心臓に照射したところ期外収縮を誘発したことが報告されている。しかし、定量的な検討や誘発の機序についてはまだ明らかとなっていいない。そこで、本研究では動物実験によって、まず、期外収縮を誘発する超音波の物理的な条件及びウサギの解剖学的・生理学的な条件を定量的に検討する。それらの結果から、誘発モデルを構築して期外収縮誘発の機序を明らかにすることを目的としている。本研究では、超音波造影剤投与後の心臓に対して音響放射力インパルスを照射した場合に、誘発される期外収縮を心電図によって検知し、その頻度と超音波の物理特性との関係を明らかにし、その結果から期外収縮誘発のメカニズムを解明する。平成28年度においては、現有の超音波イメージング装置を改造して実験装置を構築した。この装置はパソコンで制御することによって、Bモード画像を形成することができる。同時送受信可能なプローブ素子数は64チャネルである。この装置に対して次のような改造を行った。まず、ARFI発生に必要な高音圧を得るために、プローブへの出力電圧を最大120Vpp、パルス持続時間を最長20msとした。次に、心臓に対する超音波照射のタイミングを決めるため、心電図の R波を検出して任意の遅れ時間でARFI照射する機能を有する。期外収縮誘発の有無を検知は心電図で行う。ARFIを発生する超音波強度の高い領域(通常は焦点)が心臓におけるどの領域に存在しているかをモニタリングしながら、期外収縮誘発を検知するため、ARFI照射と通常のBモード撮像を切り替えて表示する。プローブは中心周波数8MHzのリニアアレイ型である。水槽実験を行ったところ、フォーカスを2cmとして最大4.3MPa、MI=0.88、フォーカス3cmとして3.4MPa、MI=0.55であった。この結果は実験条件を満足する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
超音波イメージング装置を改造して最大120Vpp、パルス持続時間を最長20msで超音波を送信できる機能を付加した。水中水槽実験によって最大4.3MPa, MI=0.88のARFI照射を確認した。Bモード画像表示とARFI照射を切り替えることが可能であるので、超音波照射部位を確認しながらARFI照射が可能である。これらの数値は実施計画通りであるが、周波数を比較的髙い8MHzとしたため、MI値は安全基準である1.9より小さくなった。周波数を高くした理由はウサギ心臓が小さいため、ヒト心臓用の周波数2-3MHzの超音波では焦点領域が広くなり、照射領域を特定することが難しい。高い周波数の超音波を用いると音圧が変わらなくてもMI値は低くなるので、プローブの駆動電圧を髙くする必要がある。高い駆動電圧を用いるとプローブの表面での発熱による破損が懸念されるため、プローブの選定に時間を要した。そのため、当初研究計画では本装置を用いたウサギ心臓に対するARFI照射実験を年度内に行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
構築したARFI照射可能な超音波イメージング装置を用いてウサギ心臓に対する超音波照射実験を行うことが重要である。期外収縮は超音波造影剤であるソナゾイド投与時に誘発される。照射部位と期外収縮発生率との関係を調査する。 実験は、ウサギ10 羽を、5羽は造影剤なし、5羽は造影剤を使用し、超音波照射の条件(音圧としては数百kPa~4MPa)を変化させる(繰り返し送波回数、照射時間)を調整しながら、不整脈の発生を観察する。場所は、自治医科大学実験医学センターで行う。実験後は、組織標本作製及び検鏡は自治医科大学で行い、光学顕微鏡では、ヘマトキシリンエオジン染色により心筋の障害の有無を観察する。また必要に応じて電顕写真を依頼する。なお、ある程度以上心筋細胞の破壊がおこれば、筋由来のH-FABP、トロポニン、CK、 AST、 ALT、 LDH などが上昇すると予想されるため、実験前後で採血を行い、比較する。自治医科大学において実験を実施する。超音波造影剤の血中濃度と期外収縮発生率に関連がある可能性が示唆されている。この実験を行うことにより造影剤の血中濃度と期外収縮発生率の関連性をより明らかにすることができる。具体的には、期外収縮誘発に要する造影剤投与量や造影剤投与後に期外収縮を誘発しやすいARFI 照射のタイミングを明らかにする。
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