研究課題/領域番号 |
16H03200
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
井澤 淳 筑波大学, システム情報系, 准教授 (20582349)
|
研究分担者 |
上野 友之 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (10390931)
大槻 麻衣 筑波大学, システム情報系, 助教 (30609095)
羽田 康司 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80317700)
村田 弓 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 人間情報研究部門, 主任研究員 (80512178)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 機能回復の計算理論 |
研究実績の概要 |
「学習性不使用」の発生メカニズムを理解するために、集団符号化仮説に基づいた一次運動野のモデルと強化学習モデルを組み合わせた運動学習モデルを構築し、一次運動野の損傷からの回復プロセスの数値実験を実施した。この機能回復モデルを用いて、皮質の回復のスピードと行動決定のスピードの不一致によって、学習性不使用が導かれることを明らかにした。特に、神経細胞の受容野の特性が運動指令生成の基底関数を形成することにより、この基底関数の特性によって、学習性不使用への捕らわれやすさが変化することを明らかにした。このような特性に基づき、リハビリテーションロボットの制御手法を導き、数値実験によってその手法が有効であることを明らかにした。本モデルを用いることによって、機能回復中の基底関数の拡大が、代償的行動における感覚経験を理想的行動の獲得へ汎化させることにとって効果的であることが、初めて明らかになった。さらに、このような基底関数の拡大と同等の効果を、ロボットマニピュランダムによって、新奇の環境を呈示することによって可能であることを明らかにした。学会発表において本成果を発表した。 本モデルの健常被験者における検証を行うために、実験パラダイム開発を行い、おおよそ50名の健常被験者で実験を実施し、パラダイムの調整と有効性の確認を行った。さらに、実際のリハビリテーションの場面でより重要になる左右手選択課題へモデルを拡張し、検証実験のための双碗型ロボットマニピュランダムの開発を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を進めるうえで重要な双腕型ロボットマニピュランダムの開発を進め、必要なダイレクトドライブモータ、ドライバや各センサ類の選定・購入を進めた。さらに、マニピュランダムの設計と制作を行い、試作品の第一号が完成した。また、インピーダンス制御のプログラム開発が終了した。 研究進捗の管理を行うために、研究分担者と月に1回のミーティングを開催し、本研究が目指すモデルベースドリハビリテーションに関する議論と研究の進捗報告を実施した。 患者を対象とした実験を進めるために、実験プロトコルの精査を安全性の評価を行い、筑波大学付属病院の倫理委員会への申請を行った。年度内に実験プロトコルが承認され、本格的に疾患例に対する実験が可能になった。年度末には1回目の実験を脊髄小脳変性症を対象として行い、実験プロトコルのフィージビリティテストを行った。結果として、安全性が確認されただけではなく、運動スキルの運動方向ごとのバイアスと、学習に対する鋭敏性の差が観測され、このような差が運動スキルの意思決定に影響を与えていることが示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き計算論モデルの構築と数値実験を行い、学習性不使用からの脱却の条件を導く。特に、『学習性不使用は①脳卒中によって②増加した感覚予測誤差の影響を③最小化するために再最適化を行い④代償行動が過剰に選択される』という仮説に基づき、仮説のさらなる理論面での検証を実施し、機能回復モデルを強固にする。 単椀型ロボットにおいて開発したモデル検証のための運動計測課題を双碗型ロボットマニピュランダムへ適用することにより、よりリハビリテーションの現実的な場面で重要になる左右手選択課題を実施できるようにする。 機能回復モデルから導かれる学習性不使用からの脱却を導く力学的環境と訓練方法を、双碗型ロボットマニピュランダムへ適用し、健常被験者における検証実験を実施する。さらに、片麻痺を伴う疾患例に対して同様の訓練を実施し、その効果の短期効果を検証する。
|