研究課題/領域番号 |
16H03206
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
礒 良崇 昭和大学, スポーツ運動科学研究所, 准教授 (60384244)
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研究分担者 |
高橋 哲也 東京工科大学, 医療保健学部, 教授 (00461179)
木庭 新治 昭和大学, 医学部, 准教授 (20276546)
鈴木 洋 昭和大学, 医学部, 教授 (90266106)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | microRNA / 運動耐容能 / 急性心筋梗塞 / 免疫老化 / 心臓リハビリテーション |
研究実績の概要 |
心血管疾患における心臓リハビリテーション(心リハ)の有効性は広く知られている。しかしながら、効果における分子細胞生物学的な機序の解明は十分にされていない。申請者は、心血管病において、”骨髄老化”を病態背景と認識し、本研究では骨髄老化のバイオマーカーの変動を同定し、急性心筋梗塞症例の運動耐容能と心リハの効果との関連性を検討することを目的とした。 今年度までの検討で、バイオマーカーとしてmicroRNA(miR)に着目し、網羅的miR sequence解析により、急性心筋梗塞の急性期経過中に大きく変動を示すmiRを同定し、定量的PCR解析により循環血中発現量を検討した。昨年度から引き続き、症例数を増やし、現状では、免疫老化関連やミトコンドリア機能関連のmiRを含む一群のmiRが、他の重症度指標と独立して、回復期(心臓リハビリ導入時)の最高酸素摂取量や嫌気性代謝閾値と統計学的に関連することが示された。心筋逸脱酵素値や心臓超音波で見る心機能よりも、運動耐容能を示す最高酸素摂取量や嫌気性代謝閾値は、心疾患患者の予後をより反映することが報告されている。それを、安静時の末梢血液中miR測定で予測可能となるなら、画期的であると考えられる。このことは、急性心筋梗塞症例の予後・重症度評価とともに、心リハ参加基準を示す指標になり得るからである。しかし一方で、心リハの効果と関連する指標は明確になっておらず、課題となった。そのため、予備試験で、心リハプログラム前後での網羅的microRNA sequence解析を実施し、検証中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
急性心筋梗塞発症早期の経時変化における網羅的miR sequence解析の結果を参考に、miR候補を選定し、定量的PCR解析により循環発現量を検討した。適宜、症例数を増やし、臨床統計学的に検証した。免疫老化関連やミトコンドリア機能関連のmiRを含む一群のmiRが、他の重症度指標と独立して、回復期(心臓リハビリ導入時)の最高酸素摂取量や嫌気性代謝閾値と統計学的に関連することが示された。心臓超音波で見る心機能よりも、運動耐容能である酸素摂取量は、心疾患患者の予後をより反映することが報告されている。発症早期の末梢血液中miR測定で、運動耐容能が予測可能となるなら、画期的であると考えられる。しかし一方で、これらが、心リハの効果と関連するかは明確にならなかった。そのため、運動耐容能の予測因子と、心リハ効果の判定因子は分けて検証していく必要性が考えられた。別途、予備試験として、心リハプログラム前後での網羅的microRNA sequence解析を実施し、詳細な検証を実施している。
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今後の研究の推進方策 |
運動耐容能の予測因子と心リハ効果の判定因子の二つの探索に分けて、検証していく。運動耐容能と末梢循環miRとの関連は、解析が進んできており、より正確に実証していくとともに、その意義について深く迫るようにする。次年度の研究計画は以下の通りである。 A: 回復期の運動耐容能と相関を認めた免疫老化関連miRを含む一群のmiRに関して、次年度も、引き続き症例数を増やし、検証精度を向上させる。 B: 今年度の検証で同定した免疫老化関連miRを含む一群のmiRの、ヒト臓器における発現を検証する。主な分泌臓器を推定するとともに、運動耐容能との関連性やmiRNAの機能について考察するためである。 C: 今年度の検証で同定した一群のmiRNAは、心リハの効果との明確な関連性は不明であった。そのため、心リハプログラム前後での血中miRNA群の網羅的解析を実施した。次年度では、詳細に臨床指標との関連性の解析を進める。それにより選定したmiRのPCRによる発現量の定量評価を行っていく。
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