研究実績の概要 |
糖尿病合併症は微小血管障害に起因する臓器の機能不全を伴う.また, 微小血管において慢性炎症を引き起こし,毛細血管を退行させる. 一方, 運動による血流増加は毛細血管の退行を抑制させることができることを報告してきた. また, 経皮的な二酸化炭素の吸収はボーア効果による血流促進効果をもつことが報告されている. そこで本研究では二酸化炭素経皮吸収による筋毛細血管退行の予防効果を検証した.さらに超音波照射による炎症抑制効果についても検証した. 二酸化炭素経皮吸収による糖尿病性毛細血管退行の予防効果について検証したところ,慢性的な高血糖曝露は骨格筋のクエン酸シンターゼ(CS)活性の低下や毛細血管の退行を引き起こした.一方,経皮的二酸化炭素吸収は高血糖曝露によるCS活性低下や毛細血管退行を抑制し,血糖の上昇を抑制した.さらに骨格筋の代謝や血管新生に関するeNOS,PGC-1α, COX Ⅳ, VEGFタンパク質発現量を増加させ,血管新生抑制因子(TSP-1)発現量の低下が認められた.また,筋芽細胞の炎症モデルに対する超音波照射ではインテグリン/focal adhesion kinase (FAK)リン酸化の増加とP38MAPKリン酸化の減少が観察され, 炎症により惹起されたTNFαの発現を軽減させる効果を観察した. これらの研究結果から経皮的二酸化炭素吸収は,微小血管でのずり応力とeNOS発現を増加させ,骨格筋の代謝や血管新生因子の増加と血管新生抑制因子の低下を引き起こし,高血糖曝露による骨格筋の酸化的リン酸化の機能低下や毛細血管退行を抑制することを明らかにした.また,パルス超音波照射はp38MAPKのリン酸化を抑制することで炎症を軽減させることが観察された.本研究成果から経皮的炭酸ガス吸収とパルス超音波による糖尿病性微小循環障害の予防改善への可能性が示された.
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