| 研究実績の概要 |
視覚障害者が触って空間情報を入手することが可能な触知案内図が公共施設の敷地案内図等として普及しつつある．こうした触知案内図が普及しつつある背景には，高齢者及び障害のある人々のニーズに対応した規格作成配慮指針（ISO/IECガイド71）に基づいて制定された触知案内図の表示法に関する日本工業規格（JIST0922）が関係している．しかし，この触知案内図のJISの規定では，現在地や階段・エレベータ等を示す触知記号の標準化に重きが置かれ，触読し易い触知案内図を作成するために必要な触知案内図の触読性に関する客観的な実証データが十分に反映されていない．そこで本研究では，触知案内図の表示法の規格に求められる人の皮膚感覚特性に基づく表示法を確立するために，触知案内図の触読性に関する客観的な実証データを収集することにした．平成30年度は，中途視覚障害者を想定した晴眼者を対象とした線の識別容易性評価実験及び視覚障害者を対象とした線の識別容易性の評価実験の知見に基づいて，こうした知見を触知案内図の製作者に提供することができた．今後は，得られた知見を踏まえた触知案内図の試作と触読性評価を継続し，触読性の高い触知案内図（触図を含む）の普及に貢献していきたい．なお，新たなテーマとして触察方法と触図の線の角度弁別の関係について，触察方法が二直線の成す角の弁別特性に及ぼす影響を評価し，当該領域の触図教材の作成の際に有用な知見を得ることができた．今後はこうしたテーマについても，更に実験参加者の属性を検討しつつ同様な実験を継続していきたい．最後に，本研究の知見は，データの考察を重ね,随時学術雑誌への投稿を行う予定である．
|
