研究課題/領域番号 |
16H03219
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
近藤 敏之 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60323820)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 運動学習 / ロボットマニピュランダム / 事象関連脱同期 / 運動主体感 |
研究実績の概要 |
H30年度は,能動的に運動する場合と同様に,運動を企図した方向に対し視覚的に誤差を付与することが,運動学習に及ぼす影響を調査する実験を行った.本実験には健康な男性19名が被験者として参加した.被験者は運動学習課題を能動的に行うActiveグループ,運動を企図した方向とは無関係に正解動作を受動的に経験するPassive Mグループ(PM),運動を企図した方向に受動的に運動を経験するPassive MEグループ(PME)の3つに分けられた.まずすべての被験者はマニピュランダムの操作に慣れるためのTraining課題を行い,次に身体図式の基準を測定するためのTest課題を行った.その後,それぞれのグループに応じた条件で視覚運動回転変換を学習した.そして最後にもう一度,すべての被験者にTest 課題を行ってもらい,学習条件の違いによってアフターエフェクトにどれだけの変化が生じるかについて調査した. 実験の結果,運動学習の前後で,グループAでは-19度程度,グループPMでは-5度程度,グループPMEでは-10度程度のアフターエフェクトの変化がそれぞれ見られた.これらのアフターエフェクトの変化について統計分析を行うため,3グループ間で一元配置分散分析を行った.分析の結果,グループ間に有意な主効果が見られた(F(2,16)=20.95; p<0.001).さらに多重比較を行った結果,グループAとグループPMの間(p<0.01),グループAとグループPMEの間(p<0.01)および,グループPMとグループPMEに間(p<0.05)に統計的な有意差が確認された.この結果より,受動的運動学習であっても,予測誤差を認知することは内部モデルを更新するのに有効である可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は,前年度までに構築した実験システムを用いて,能動学習群(Group A),運動企図+受動学習群(Group PM),運動企図+視覚誤差提示+受動運動学習群(Group PME)の3群について視覚運動回転変換環境下の到達運動学習実験に取り組んだ.実験者が指示した通りのプロトコルで正しく運動学習を行った19名の被験者のデータに対し統計解析を行い,運動学習後のアフターエフェクトならびに,身体図式(手先位置の体性感覚による知覚)の変化について調査した.実験の結果,(1)視覚誤差を提示した受動運動学習群(PME)は受動運動学習群(PM)よりもアフターエフェクトが有意に大きいこと,(2)いずれの群も体性感覚による手先位置知覚に同程度の変容が生じること,を確認した. 以上の結果についてまとめ国際会議EmboSS2018にて発表した. 以上のことから,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,この課題をロボットマニピュランダムにより受動的に経験する3つの実験群(①運動企図条件,②運動指令条件および③受動的学習条件)と④能動的に実行する対照群の4グループに分けて学習させ,その運動学習成績から運動企図の有無,運動指令の随意的生成の有無がそれぞれ運動学習に及ぼす影響を分離して評価することを試みる.①運動企図条件では,運動企図はあるものの運動指令は生成しない実験条件を実現するため,実際に運動を獲得させる身体部位(本研究の場合は右上肢)とは異なる身体部位(左上肢または下肢)の運動をトリガとしてロボットを駆動し,右上肢に受動的に運動を経験させる.②運動指令条件では,右上肢の随意運動(または筋活動)をトリガとしてロボットを駆動する.運動指令をトリガとした受動的運動を実現するため,ハンドルに取り付けられた6軸力センサの反応から被験者の随意運動方向を計測する.③受動的学習条件では,被験者が予期せぬタイミングでロボットを駆動し,被験者の運動企図や運動指令の生成とは無相関に受動的運動を実現するため,ターゲット表示から100~200 msの一様ランダムな遅延時間の後に,実験条件①と同様の受動的運動を開始する.④対照群では,マニピュランダムによる運動支援は行わず,被験者が随意的に腕を動かして30°視覚運動回転課題の運動学習を行う. 本年度は最終年度であり,平成30年度までに実施した研究項目1(学習者の「能動性」が運動技能の記憶に及ぼす影響の解明)と研究項目2(学習者の「能動性」をオンラインで定量的に評価する生理指標の開発)に関する実験結果を考察し,投稿論文としてまとめる.
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