研究課題/領域番号 |
16H03232
|
研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
今村 律子 福岡大学, スポーツ科学部, 准教授 (90289554)
|
研究分担者 |
磯貝 浩久 九州工業大学, 教養教育院, 准教授 (70223055)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 周辺視 / 広域 |
研究実績の概要 |
本研究は,アスリートの「観るチカラ」を解明するために,広域複数視覚対象に対する視覚情報獲得のメカニズムを明らかにすることを目的としている.まず,広域の視覚複数覚対象に対する,注視点距離の揺動の特徴を明らかにするために,眼球運動測定装置(nac 社製アイマークレコーダーEMR-9)を装着し,課題実施中の注視点距離の測定を行った.当研究チームが先行研究において使用していた広域視覚刺激呈示システムは,モニターと反応装置の増設が可能で あり,モニターが可動式のため周辺視野範囲の調整が自由に行える利点を有している. 当該年度は,初年度に測定した被験者(約65名)に,選択的注意を測定する認知検査として新ストループ検査Ⅱ,TAIS検査を実施し,データ分析を行なった.また,既に得ているデータを精査し,タイプ別注視点揺動のモデル構築を開始している.タイプ別注視点揺動のモデル構築は,被験者のデータを集約し,タイプA(視覚対象範囲が広域な場合で,視覚情報の選択肢も多く,物理的にも心理的にも情報負荷量が多い場面において,熟練度が高い群には注視点の揺動間隔と遠方への注 視点揺動回数が多く抽出される),タイプB(視覚対象範囲は広域であるが,視覚情報選択肢が少ない場合,注視点の揺動間隔τi, はタイプAより長く,注視点揺動回数は減少する),タイプC(視 覚対象範囲は対象の周辺に限られ,視覚情報選択肢が少ない場合,注視点の揺動間隔 τ i ,はタイプBよりも長くなり,注視点揺動回数もさらに減少する),タイプD(視覚対象は,正確な位置判断等に費やされるため,注視点の揺動間隔に一定の傾向は見られず,注視点の揺動回数は極端に少ない)といった4 タイプの分類を行なっている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度後半に発生した,呈示動作とプログラム実行動作に遅延が発生する等の不具合によって,測定を一次中断することになりその修復を終えた後,測定を再開した.しかし,当大学の施設改築工事により,隣接の実験場所は工事対象ではなかったものの,急きょ使用不可能となったため,再度中断となった.しかし,その期間にデータ精査とタイプ分類のモデル構築も進めていた.年度末から施設使用が可能になったため,次年度春より再開可能になり,早期に残り30名程度の測定の追加を行う予定であるため,早期のデータ分析は可能である.また,その対象には,次年度予定のしているfNIRS(日立メディコ製光トポグラフィ)の測定者も含まれているため,脳内血流量を測定する場合にも,スムーズなコンタクトが期待される.したがって,当初の研究計画からやや遅れているものの,次年度への影響は少ないと見込んでいる.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,広範囲から呈示される複数視覚対象観察における注視点距離揺動の基礎データと,認知検査(新ストループ検査Ⅱ,TAIS 検査)等のデータ分析を継続し,タイプ別注視点揺動モデルの構築を進める.タイプ別注視点揺動のモデル構築は,被験者のすべてのデータを集約し.タイプA,タイプB,タイプC,タイプDの4タイプの分類を行う. 広域視覚刺激呈示システムを使用し,広域の反応を必要とする 周辺視野に呈示される複数の視覚対象をランダムに連続呈示を行う.被験者には,アイマークレコーダー(グラスタイプ)とfNIRSを装着し,呈示対象の位置や動きの認識に重要な役割を果たす背側皮質視覚路(後頭 葉の最尾側から起こり頭頂葉に向かう場所),及び集中力を高める時に 反応する前頭前野のそれぞれの脳内血流量を測定する.脳血流測定は,前頭前野(前頭部 3×5,運動野前野,補足運動野及び一次運動野4×4 ホルダーを使用),及び後頭葉(3×5 ホルダーを使用) の領域にプローブをセットする.被験者は,それぞれのタイプから選ぶ.脳血流量の相対的な増大を反映するとされるオキシヘモ グロビン濃度(Oxy-Hb),デオキシヘモグオビン濃度(Deoxy-Hb),総ヘモグロビン濃度(Total-Hb)の変化量と反応時間を分析対象とするこれらの測定・検査項目をタイプ別に新ストループ検査ⅡおよびTAIS のスコアを比較し,評価を行う.タイプ別注視点揺動のモデル構築により,スポーツ場面での効率的な視覚情報の獲得方略を確立する.この測定を行うことで広域複数視覚対象に対する 視覚情報獲得のメカニズムを明らかにし,注視点距離の揺動が及ぼす視野範囲への影響を調べる.今後は,本研究の総括を行うとともに,研究成果を研究誌や学会発表などを通して広く公表する.
|