研究課題
本研究では成長段階を考慮した成長期男女サッカー選手の運動能力開発の基礎情報を得ることを目的としている。今年度は成長期女男女サッカー選手102名(男子48名、女子54名)を対象に、形態(身長、体重、体脂肪率)と運動能力(Yo-YoIR1/IR2、40m走/50m走、10mx5走、5段跳び)を1年間あるいは6か月間の変化量を成長段階間で比較した。その結果、女子選手の5段跳びはPHVA後のPost+1年(0.54±0.33m/y)で顕著に増加した。また10mx5走はPost+2年(-0.24±0.31秒/y)に発達する傾向が示された。男子の変化(6か月間)では統計学的有意な差ではなかったものの、5段跳びの変化量がPost(0.63±0.41m/hy)およびPost+1年(0.66±0.4m/hy)でPreよりも大きく、10mx5走においてPost群(-0.33±0.17秒/hy)がPost+2年よりも大きく変化する傾向を示した。また、男子中学生選手25名を対象に除脂肪量、膝関節伸展・屈曲筋力、垂直跳び、股関節可動域、5m×2タイムの測定と方向転換動作の3次元動作解析を1年のインターバルをはさみ2回行った。その結果、5mx2タイムはPHVA前とPHVA中(PHVA±1年)に短縮し、PHVA前の短縮は減速時の重心高変位量が影響し、右膝関節屈曲遠心性筋力の発達が重要であり、PHVA中では減速期の重心速度変位量が影響し、左膝関節屈曲角度変位量が重要であることを示した。これらの結果は5段跳びや方向転換能力は主にPHVA中から後がトレーニング敏感期であることを示す。一方、その時期は男女で異なることから、それぞれの敏感期にトレーニング刺激を加えることの重要性を示唆する。さらに方向転換能力発達に影響するキネマティクスや運動機能は成長段階で異なることを考慮したトレーニング計画も必要である。
2: おおむね順調に進展している
概ね順調に進展している。ただし、以下の点で当初の予定より遅れている点とデータ収集において規模の縮小を余儀なくされている。1:2017年度に予定していた国内エリート選手の運動能力分析結果および成熟度開発指標の検討に関する論文執筆が未完成である。この点は2018年度に完遂するように執筆を進める。2:方向転換動作のキネマティクス縦断研究において、女子選手で一部データが解析不良になっている。2018年度にこれを補完するデータを取得するか、もしくは別方法を模索する。3:体力縦断変化(B-2、3)の対象チームがチーム事情により縮小しており、当初350名を対象としていたが、男女合わせて200名程度に縮小される可能性がある。上述した課題はあるものの、当初予定していた成長段階において顕著に発達する運動能力は明確になりつつあるため、概ね研究計画は順調に進んでいると考える。
最終年度(2018年度)はこれまでに未遂である方向転換動作の分析(A1)、成長期サッカー選手の体力・運動能力変化に関する分析結果(B1、2)および成熟度開発指標の検討(C)、国内エリート選手のリファレンスデータ(D)の論文執筆を中心に行う。現段階ですでに準備ができているものは、リファレンスデータ(D)の論文執筆、体力運動能力と成熟段階の関係(B1)についての学会発表準備(European College of Sports Scienceを予定)、そして女子サッカー選手のトレーニング指針(D)についての報告書執筆である(日本サッカー協会発刊のテクニカルニュース6月号にて掲載予定)。これらに加えて上半期に行うことは、年間変化量との関係(B2)についての国内学会発表準備である。さらに方向転換動作の分析(A1、2)および成熟度開発指標の検討(C)の研究成果を論文化することも上半期に行う。下半期には体力・運動能力の縦断的変化を分析するためのデータ収集と、これらの成果を発表するためのシンポジウムを開催する。
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Sports Medicine
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International Journal of Adolescent Medicine and Health
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