本年度は,昨年度に引き続き,マイクロRNA(miRNA)のプロセシングに必須の酵素であるDicerを欠損させることで,ほぼすべてのmiRNAを欠損するマウスと,特定のmiRNAを欠損するマウスを対象に,持久性運動による骨格筋適応についての解析を行った. まず,Dicer1 floxedマウスとTie2-Creマウスとの交配によってごく少数の血管特異的Dicer欠損マウスを得たが,ほぼすべては胎生致死であった.このため,タモキシフェン誘導性にCreリコンビナーゼを機能させるCAG-Cre-ESRマウスとDicer1 floxedマウスを交配し,産後全身性にDicerを欠損させることが可能なマウスを用いて,運動による骨格筋毛細血管ネットワーク再構築におけるmiRNAの役割について検討した.このマウスでは,全身の組織において著名なDicer1 mRNAの減少を認め,ほとんどすべてのmiRNAについて,その減少を認めた.ただ,このマウスはタモキシフェン投与後,ほぼすべてが5週間以内に死亡した.このことから,生命の維持において,miRNAが重要な役割を果たしていることが示唆された. 一方,特定のmiRNA欠損マウスを用いた骨格筋持久性運動適応の解析に関して,miR-23aクラスターfloxedマウスとmiR-23aクラスターfloxedマウスとCkmm-Creマウスとの交配により,骨格筋特異的miR-23a/bクラスター欠損マウスを,Tie2-Creマウスとの交配により,血管特異的にmiR-23クラスターを欠損するマウスを得た.現在,これらのマウスを用いて,骨格筋持久性運動適応におけるこれらのmiRNAの役割についての解析を行っている.
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