研究実績の概要 |
メタボローム解析の結果は,高脂肪食摂取(HFD)や運動トレーニング(EX)によって脂肪由来幹細胞(ADSC)のから分化させた脂肪細胞(分化脂肪細胞)のアミノ酸代謝が大きく変化することを示していた。分化脂肪細胞のマイクロアレイ解析によって網羅的解析を行った結果,糖源性アミノ酸代謝系のいくつかの遺伝子発現がHFDやEXによって著しく変化し,こうした変化は内蔵脂肪組織(VAT)と皮下脂肪組織(SAT)で大きく異なっていた。さらに,VATとSATの発生遺伝子発現におよぼすEXの影響について詳細に検討した。Hox遺伝子などの発生遺伝子群の発現がSATとVATで異なり,体脂肪分布や脂肪細胞の分化に関連していることが報告されている。発生遺伝子群の発現に及ぼすEXの影響を検討した結果,HoxC8,HoxC9,Gpc4,Bmpr1a,Pparγ, Pgc1α, Adrb3, HslのmRNA発現量と脂肪組織重量増加との相関関係はVATとSATで異なり,その相関関係に及ぼすEXの影響も脂肪組織の部位に特異的であった: SATではHoxC8, HoxC9, HoxC10, Gpc4, Pparγ のmRNA発現量がEXによって低下し,HoxA5と Pgc1α mRNA の発現量は増加するが,VATでは, HoxC9, Gpc4, PparγのmRNA発現量がEXによって増加し,HoxA5の発現量は低下していた。また,ADSCの多分化能を検討する目的で神経細胞への分化能を検討したところ,HFDはその分化能を低下させ,EXがこれを改善することも明らかにした。以上の結果は,肥満や運動によるADSCの分化能変化のメカニズム解明や,ADSCに焦点を当てた新しいストラテジーによる運動処方法の開拓を加速させるものである。
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