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2016 年度 実績報告書

骨格筋糖取り込みを高める栄養・運動処方に関する基礎研究 -ビタミンDに着目して-

研究課題

研究課題/領域番号 16H03244
研究機関福岡大学

研究代表者

川中 健太郎  福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (80339960)

研究分担者 田中 宏暁  福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (00078544)
檜垣 靖樹  福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (10228702)
増田 紘之  新潟医療福祉大学, 健康科学部, 助手 (10738561)
羅 成圭  福岡大学, スポーツ科学部, 助教 (60741999)
上原 吉就  福岡大学, スポーツ科学部, 教授 (70373149)
池永 昌弘  福岡大学, スポーツ科学部, 助教 (90735573)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードビタミンD / 血糖値 / インスリン / 耐糖能力 / インスリン抵抗性 / 骨格筋 / 内臓脂肪 / ラット
研究実績の概要

ビタミンDは腸管におけるカルシウム吸収や骨形成を高める働きがよく知られている。一方、最近、骨格筋にもビタミンD受容体が発現していることが知られるようになった。つまり、ビタミンDは骨格筋に作用して様々な生理効果を引き起こす可能性がある。本研究は、ビタミンDが骨格筋の糖代謝を促進する可能性について検討することが大きな目的である。28年度には「ビタミンD摂取量の違いが実験動物の耐糖能力に及ぼす影響」について検討する実験を行ったので報告する。
7週齢のWistar系雄性ラット29匹をビタミンD欠乏食群(VD欠乏食群)、ビタミンD普通食群(VD普通食群)、ならびにビタミンD過剰食群(VD過剰食群)に分けて、それぞれの群にビタミンD含量 0, 2000, 10000IU/kg重量の飼料を摂取させながら9週間飼育した。飼育8週目に腹腔内糖負荷試験を行ったところ、VD欠乏食とVD過剰食群ではVD普通食群に比べて糖負荷後の血糖値が高く、耐糖能力が低下している傾向がみられた。血中インスリンレベルには差はなく、膵臓からのインスリン分泌能力の変化はみられなかった。血糖の大半は骨格筋によって取り込まれるので、ビタミンD摂取量の違いによる耐糖能力の変化は骨格筋のインスリン感受性の変化による可能性が高い。そこで、現在、骨格筋のインスリン情報伝達経路やGLUT4含量が変化している可能性について検討している。ちなみに、内臓脂肪蓄積が骨格筋のインスリン抵抗性を引き起こすが、VD欠乏や過剰は内臓脂肪量には影響を及ぼさなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

ビタミンDが有する骨格筋への急性作用効果として、GLUT4(糖輸送担体)のトランスロケーションを引き起こして糖取り込みを促進する可能性を、また、慢性作用効果としてGLUT4遺伝子発現を増加させる可能性を考えている。当初の予定では、28年度にビタミンDの急性効果、29年度に慢性効果を検討する予定であった。しかし、代表者の川中が福岡大学に転任して間もないこと、また、実験室スペースが確保できていないことから(現在、福岡大学当局に実験スペースの増加を申請中)、ビタミンDが有する急性効果を検討するための摘出筋糖取り込み試験のセットアップが間に合わなかった。そこで、29年度に実施予定であったビタミンDの慢性投与実験を前倒して実施した。計画変更はあったものの、概ね順調に研究は進行している。しかし、GLUT4の遺伝子発現の解析結果がまだ得られていないため進捗状況を「やや遅れている」と判定している。

今後の研究の推進方策

現在、ビタミンD欠乏食ならびに過剰食を9週間摂餌させたラットの骨格筋について、GLUT4タンパク質発現量ならびにGLUT4トランスロケーションに関わるシグナル伝達物質(Aktキナーゼ、Foxo1など)の活性レベルと発現量を測定中である。さらに、ビタミンD受容体のタンパク質発現量の変化についても検討する予定である。
また、現在、ラットから摘出したepitrochlearis筋(滑車上筋)を用いて糖取り込み速度を測定する評価系のセットアップが進行中である。この評価系を確立後、摘出筋をビタミンDに急性暴露させたときに糖取り込みが促進される可能性を検討する予定である。
さらに、ビタミンDは骨格筋に作用することで筋量を調節する可能性が示唆されている。我々も、ビタミンD欠乏食を与えたラットのPlantaris筋(足底筋)において筋萎縮を観察している。しかし、ビタミンDが筋量を調節する仕組みについては不明である。そこで、当初の研究計画には含まれていなかったが、ビタミンDが骨格筋のタンパク質合成を高める可能性、また、タンパク質分解を抑制する可能性についても検討する。タンパク質合成や分解の指標としてはp70S6K, 4E-BP1, ULK1, LC3, MAFbx, MuRF1のなかから選択する。
そのほか、老化動物の骨格筋における運動とビタミンD投与の効果を検討するためにマウスの長期飼育を開始する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Motor Skills Training Improves Sensorimotor Dysfunction and Increases Microtubule-Associated Protein 2 mRNA Expression in Rats with Intracerebral Hemorrhage.2016

    • 著者名/発表者名
      Tamakoshi K, Kawanaka K, Onishi H, Takamatsu Y, Ishida K.
    • 雑誌名

      J Stroke Cerebrovasc Dis.

      巻: 25 ページ: 2071-2077

    • DOI

      10.1016

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Effects of environmental enrichment in aged mice on anxiety-like behaviors and neuronal nitric oxide synthase expression in the brain.2016

    • 著者名/発表者名
      Tomiga Y, Ito A, Sudo M, Ando S, Maruyama A, Nakashima S, Kawanaka K, Uehara Y, Kiyonaga A, Tanaka H, Higaki Y.
    • 雑誌名

      Biochem Biophys Res Commun

      巻: 476 ページ: 635-640

    • DOI

      10.1016

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Immobilization rapidly induces muscle insulin resistance together with the activation of MAPKs (JNK and p38) and impairment of AS160 phosphorylation.2016

    • 著者名/発表者名
      Kawamoto E, Koshinaka K, Yoshimura T, Masuda H, Kawanaka K
    • 雑誌名

      Physiol. Rep.

      巻: 4 ページ: e12876

    • DOI

      10.14814

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 身体活動・不活動と骨格筋インスリン感受性の最新知見2017

    • 著者名/発表者名
      川中健太郎
    • 学会等名
      九州大学リサーチコア
    • 発表場所
      九州大学筑紫キャンパス
    • 年月日
      2017-01-28 – 2017-01-28
    • 招待講演
  • [学会発表] 軽運動が不活動誘発性骨格筋インスリン抵抗性の改善に及ぼす影響2016

    • 著者名/発表者名
      河本絵美、川中健太郎
    • 学会等名
      第71回日本体力医学会
    • 発表場所
      いわて県民情報交流センター
    • 年月日
      2016-09-23 – 2016-09-23

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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