研究課題/領域番号 |
16H03248
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
石井 聡 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 病院講師 (90587809)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 疲労 / 疲労感 / パフォーマンス / 神経メカニズム / 脳磁図 / 意識 |
研究実績の概要 |
本研究は疲労感が生じる神経メカニズムおよび疲労感が活動能力の低下を引き起こす神経メカニズムの双方を明らかにすることを目的としている。平成29年度には疲労感の無意識下条件付けという革新的な実験パラダイムを新規に開発することで疲労に際して疲労感を介さずにパフォーマンスを低下させる脳内メカニズムが存在することを明らかにした。その一方で、疲労感の自覚(主観的な感覚)が休息の選択などの意思決定において真に決定的な役割を果たしているのか否かは明らかではなかった。つまり、疲労感を自覚することをきっかけに休息選択に関わる行動決定プロセスが起動する可能性と、疲労感を自覚するよりも前に、疲労感に依らずに休息を選択することが既に決定されている可能性の双方を考えることができる。平成30年度は、疲労感に基づいて休息が決定されているように見える状況において、疲労感に関する自覚が生じる時刻に先行して行動を引き起こす準備電位が観察され得るかを観察することによって、疲労感が意思決定において真に決定的な役割を果たしているのか否かを検討した。その結果、疲労感に関する自覚に先行する準備電位は観察されず、少なくとも本研究の状況下では、疲労感の自覚よりも以前に何らかの神経メカニズムによって行動が決定さている訳ではないこと、すなわち疲労感が意思決定において真に決定的な役割を果たしていることが示された。この結果は、前年度までの成果と合わせて、疲労におけるパフォーマンス調節においては、疲労感を介さない無意識的なメカニズムと疲労感を介する意識的なメカニズムの双方が関わっていることを明確に示しており、疲労の神経メカニズムの理解を深める上で重要な知見であると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
疲労時のパフォーマンス調節に関わる神経メカニズムを理解する上で重要な知見が得られ、今後取り組むべき課題がより明確になった。本研究課題の目標の達成に向けてさらに研究を発展・完成させていく基盤が構築されつつあり、研究は概ね順調に進行していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成31年度は昨年度までの研究成果に基づき、疲労感の生成に重要な役割を果たしていると考えられる有力な神経メカニズムの候補を検証することを初めとして、疲労感の生成・修飾に関わる神経メカニズムおよび疲労時のパフォーマンス調節に関わる神経メカニズム等についての脳磁研究を実施する予定である。
|