研究課題
申請者らは先の科研費(平成25-27年度・基盤B・25282209)で、コミュニティ・ワイド・キャンペーンによる身体活動促進の効果を地域ランダム化試験で検証し、身体活動実施者の割合を有意に増加させる効果を明らかにした。本研究はこの研究を発展させるもので、次の3点を目的としている。【研究1】先の研究の対象者(および対象地域の住民)をさらに追跡し、1)要介護・死亡をアウトカムとした長期的効果を検証すること、2)介入の費用対効果を明らかにすること、【研究2】新たな地域介入研究として、3)介入をさらに広域(雲南市全域:人口約40,000人、面積553km2)に展開し、より実際的な条件(一般的な市区町村が有する程度のリソースを活用した、実験的ではない条件)のもとで介入効果を検証すること(拡散研究:Dissemination researchの開始)。初年度(平成28年度)の計画は、目的1)-3)のそれぞれについて、1)要介護・死亡データについて行政内の起案・承認を得て、データベース化、分析を進めること、2)費用対効果は次年度以降の課題、3)拡散研究については雲南市全域の住民を対象にベースライン調査を行うこと、であった。その結果、1)については行政内での起案・決済を終了し、データを取得する準備を完了した。2)は次年度以降の課題であったが、コスト評価に必要な介入に関する情報(用いた人的資源、資材)の整理を行った、3)については調査票の作成、倫理審査、臨床試験登録を経て、2016年10月に雲南市全域より無作為に抽出した40-79歳の男女7000人(運動実施者割合を5年間で4%増加させる、回収率は60%を仮定)を対象に調査を行った。その結果、3,963人(回収率56.6%)より回答を得た。データ入力を終了し、現在はデータクリーニングを進めている。
2: おおむね順調に進展している
初年度の最も重要な課題は、地域介入の広域展開(雲南市全域での介入)の準備を進めるとともに、雲南市全域より無作為に抽出した住民7000人に対してベースライン調査を実施することだった。予定通り研究計画を確定し、調査票の作成、倫理審査、臨床試験登録を行い、10月に地域住民7000人を対象にベースライン調査を行うことができた。その他の課題も含めて本研究の3つの目的それぞれについて達成度を評価すると、1)先の地域介入研究(平成21年10月から平成26年10月)の要介護・死亡の評価:計画より若干遅れて進行している。当初の予定では完全にデータを取得して分析に着手する計画だったが、行政内での起案・承認を得たところで、まだデータベースが完成していない。2)先の地域介入研究の費用対効果の検討:当初の計画以上に進行している。この課題は平成29年度以降の課題であったが、既に、コストの評価に必要な介入に関する情報の整理(介入費用算出のために実施した介入に投じた人的資源や用いた資材等に関する情報の整理)を行った。3)拡散研究のベースライン調査:計画に沿って順調に進展している。上述の通り、本年度の最も重要な課題であったが、計画通り行うことができた。
概ね計画通りに進行しており、平成29年度も当初の計画に沿って研究を実施する。1)先の地域介入研究(平成21年10月から平成26年10月)のアウトカムとしての要介護・死亡の評価:データ取得を進めて分析を行う。既に行政内の起案・承認は得られており、データ入力、クリーニング、分析を行える状況にある。最終的には介入開始7年後(平成28年10月)までのデータベースを完成して分析する。2)先の地域介入研究の費用対効果の検討:当初の計画に則って平成29年度から平成30年度にかけて費用対効果の分析を行う。これまで実施してきた詳細なプロセス評価の記録をもとに、介入費用を算出する。アウトカムを身体活動、要介護認定、死亡等として費用効果比、増分費用効果比を算出する。3)拡散研究:計画通り、介入を雲南市全域に展開する。介入は平成21年度から平成26年度に実施した地域クラスターランダム化試験と同様にソーシャルマーケッティングを活用したコミュニティ・ワイド・キャンペーンとする。具体的には介入内容を「情報提供」「教育機会」「サポート環境」の3 要素で構成することとして、先の研究での経験をもとに、住民組織・自治体と協議を重ね、介入受け入れの準備性等を考慮した上で、地域の特性、資源に応じた介入を開始する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 6件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
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