研究課題
メタボリック症候群・肥満患者における高血圧の制御は、国民の健康寿命延伸・医療費削減の両面から喫緊の課題である。近年、脂肪細胞由来の未知の液性昇圧因子が直接副腎に作用することによりアンジオテンシンIIとは独立してCYP11B2発現・アルドステロン分泌を亢進させ、肥満高血圧症の原因となっている可能性が示唆されている。本研究の目的は、同因子を単離・同定して機能解析を行った後、同因子を標的とした肥満高血圧症の新規創薬を進めることである。昨年までの段階で、マウス脂肪細胞3T3-L1の培養上清を用いた質量分析の結果、12種類の候補因子が同定された。それらの因子のcDNAを単離し、HEK293T細胞を用いて過剰発現を行い、その中の一個(X因子)がヒト副腎H295R細胞においてCYP11B2 mRNA発現を亢進させることを見出した。現在我々は、得られたX因子をCYP11B2転写活性を鋭敏にモニター可能な安定発現株であるCYP11B2-H295R細胞に添加してそのルシフェラーゼ活性の上昇を確認中である。今後は、同株を用いたハイスループットスクリーニング(HTS)系を確立するとともに、その系を用いて東北大学化合物ライブラリーのHTSを行い、化合物XのCYP11B2転写活性を抑制するヒット化合物を得る。さらに、得られたヒット化合物の合成展開・構造最適化を進めることにより、より活性が高く毒性の低いリード化合物の獲得を目指す。本プロジェクトの遂行により、肥満高血圧症の新規創薬・治療法の開発が進むものと期待される。
3: やや遅れている
質量分析の結果同定された12種類の候補因子のcDNAの単離ならびにHEK293T細胞を用いての過剰発現が予想以上に時間がかかったため、若干当初の計画より遅れている。
現在X因子の機能解析を行っているが、今後は同因子の活性を抑制する化合物をHTSにてスクリーニングする予定である。当分野では他プロジェクトにてHTSの施行経験があることから、スムーズに新規創薬を進められると考えられる。
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