研究課題
CREBHは肝臓・小腸で発現する転写因子であり、肝臓でのCREBHの発現は栄養飢餓時に肝臓に供給される脂肪酸により誘導される(Danno BBRC 2010)。現在までに肝臓においてCREBHは棟・しh室代謝を改善し、糖尿病、肥満を改善することを明らかにしてきた(Nakagawa 2014 Endocrinology)。本課題ではさらに、CREBHが小腸からのコレステロール吸収を抑制しコレステロール代謝を改善させることで血中コレステロールの上昇、脂肪肝の抑制を示すことを腸管特異的Tgマウスの解析から明らかにした(Kikuchi 2016 Mol Metab)。CREBHの欠損マウスに高脂肪食、高コレステロール食の解析から、それぞれの食事で誘導される非アルコール性脂肪肝の発症に対し、脂質特異的にCREBHが組織別に関わることを見出した(Nakagawa 2016 Sci Rep, Kikuchi 2016 Mol Metab)。さらに、CRISPR/Cas9システムを用い、CREBH組織特異的KOマウスを作成した(Nakagawa 2016 Sci Rep)。このマウス作成は1度のゲノム編集操作で2か所にloxP siteを入れ、最終的に組織特異的KOマウスを作成した世界初めての成功例であった。肝臓特異的CREBH KOマウスは全身のCREBH KOマウス同様に糖・脂質代謝に異常を呈した。非アルコール性脂肪肝誘導食による病態誘導で早期に肝障害を引き起こすことを報告した(Nakagawa 2016 Sci Rep)。
1: 当初の計画以上に進展している
CREBHの腸肝循環における脂質代謝への機能について論文報告した。肝臓のCREBHが中性脂肪に、小腸CREBHがコレステロール代謝に寄与することを報告した。また、CREBH組織特異的KOマウスをCRISPR/Cas9システムを用い、作成を完了した。
【食事負荷による肝障害】高脂肪食、高コレステロール食、高ショ糖食などの食事負荷による糖・脂質代謝異常におけるCREBHの機能を肝臓、小腸の病態評価、遺伝子発現などで評価する。血中肝障害マーカー(ALT、AST、γ-GTP、ALP)、血中・組織・糞便中胆汁酸濃度、組成を測定する。【CREBH欠損による肝がん形成の網羅的解析】肝障害⇒肝硬変⇒肝がんへ進展する際にCREBH欠損がどのシグナル、転写などのパスウェイを介するのかをトランスクリプトーム、メタボローム、リピドーム、プロテオーム解析から網羅的にそして統合的に解析し明らかにする。我々は新たな肝がん発症モデル(LXRアゴニスト投与、高脂肪食負荷)を確立しており、CREBH遺伝子改変マウスで評価する。【腸肝および神経系を介した組織連関による肝障害】肝臓、小腸でのCREBHの発現が直接的、間接的に肝臓での炎症に関連するかを組織連関から解析する。食事成分の変化、栄養条件も要素に組み、解析する。肝臓、小腸をつなぐ神経(直接、脳を介した間接経路)を遮断し、関連を検証する。【腸管免疫からの発がんメカニズムへの影響】腸管免疫の破綻は腸内細菌との関連から敗血症を発症させる。このメカニズムにおいてCREBHの関連、肝臓細胞死への影響を検討する。LPS、D-ガラクトサミン投与による肝障害に対する適応性をCREBH遺伝子改変マウスで検証する。【肝実質細胞―肝非実質細胞との細胞相互作用】CREBHは肝実質細胞にのみ発現する。肝実質細胞から分泌される因子がクッパ―細胞での炎症、星細胞の線維化を誘導すると想定している。KO, Tgマウスから単離した肝実質細胞―肝非実質細胞を共培養する。分泌される因子を次世代シークエンス、プロテオーム解析、メタボローム解析から同定する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 3件) 備考 (1件)
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