研究課題
動脈硬化の解析では新たに作成した肝臓、小腸特異的CREBHノックアウトマウスと動脈硬化モデルマウス(LDLR KO)と交配したマウスを作成した。肝臓と小腸の両者でCREBHを欠損したLDLR KO CREBH KOマウスでは高トリグリセライド血症、高コレステロール血症を呈することはすでにデータを持っていたが、新たなにLDLR KO肝臓特異的CREBH KO (LKO)とLDLR KO 小腸特異的CREBH KO (IKO)マウスの両者でも同様にトリグリセリドとコレステロールが血中で高値を示す結果を新たに得た。肝臓、小腸のCREBHが血中脂質の代謝に関与することが示された。CREBH過剰発現マウス(CREBH Tg)が生活習慣病改善ホルモンFGF21を介し、動脈硬化を改善するかをCREBH Tg LDLR KOマウスとFGF21 KOマウスを交配し、CREBH Tg LDLR KO FGF21 KOマウスを作成した。このマウスでは動脈硬化の改善が見られなかった。したがって、CREBH Tgマウスによる動脈硬化の改善はFGF21が大きく関与することが明らかとなった。分子レベルではCREBHがSREBPの切断活性の過程において抑制的に機能することを明らかにした。小胞体膜上に存在するSREBPが活性化のためゴルジ体に移行する際に、CREBHはSREBPと結合することで、その移行を抑制する。結果的にSREBPの核への移行、転写活性化が抑制された。このメカニズムがCREBH KOマウスでの血中脂質の上昇を説明することが示唆された。CREBHと同様な機能をもつ脂質異常症の治療ターゲットである転写因子PPARαの新規リガンドで従来のものよりも1000倍活性化能をもつ薬剤Pemafibrate (K-877)とPPARαの立体構造コンピューターシミュレーションを行った(Yamamoto BBRC 2018)。
2: おおむね順調に進展している
脂肪酸・コレステロール合成を統括する転写因子SREBPの中で最も転写活性が高いSREBP-1a KOマウスをCRISPR/Cas9システムを用い作成した。さらに、SREBP-1aの組織特異的KOマウスの作製のためのSREBP-1a floxマウスが作成できたことを確認した。現在、SREBP-1a, cの両者をノックアウトするSREBP-1 floxマウスを作成している。CREBHを中心とした転写因子間相互作用を解析するためのSREBP-1組織特異的遺伝子改変マウスを作成している。CREBHはPPARa、SREBP、LXR、ChREBPとの相互作用しているデータを得ており、病態モデルにおける変化を検討している。分子間相互をコンピューターでシミュレーションすることが可能となった。
肝臓、小腸のCREBHがどのような代謝経路に影響を及ぼし、血中脂質の恒常性を維持しているかを動脈硬化モデルマウスで解析を行う。栄養吸収、栄養代謝を中心に転写制御レベルでの解析を中心に行う。腸肝循環では胆汁酸が重要であり、今後はコレステロールからの胆汁酸合成、胆汁酸によるコレステロール吸収にも着目する。肝臓におけるCREBHの機能解析に遺伝子改変マウスから肝臓を構成する細胞集団から肝細胞、クッパ―細胞などを分取し、混合培養することで炎症における機能を明らかにする。小腸では遺伝子改変マウスから小腸オルガノイドを培養する。CREBHをはじめとする転写因子による小腸オルガノイド形成への影響を検討し、発生・分化を評価する。この変化が栄養吸収にも栄養するかも評価する。CREBHの組織特異的過剰発現・ノックアウトマウスを中心に肝臓―小腸の連関におけるCREBHの機能を栄養吸収・代謝の面から明らかにする。特にコレステロール代謝、胆汁酸代謝から非アルコール性脂肪肝、肝がんへの影響を検討する。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
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